フランス料理を全く知らないコロちゃんでも、有名なフランス料理店「オテル・ドゥ・ミクニ」のオーナーシェフの名前くらいは聞いたことがあります。
四谷の高級住宅地の奥にある、隠れ家のようなレストランの前を車で通って、「あらあら、こんなとこにあるんだー」とちょっとびっくりしたこともありましたからね。
その三国清三氏が本を出したと聞いて、さっそく読んでみました。そしたら、それがすごーく面白いんです。
「三流シェフ」(三國清三 幻冬舎 2022年)
①貧しい漁師の子
三國清三氏は、コロちゃんとほぼ同年代です。
コロちゃんは東北地方の田舎町出身ですが、三國氏は北海道の増毛という漁師町の出身。
本で読んでいくと、極貧の生活から這い上がってきているのです。まるで、ドラマの世界のようです。
この時代は、コロちゃんも体感していますから、よく知っています。
その以前の時代と違って、ふつうはそこまでの極貧生活の人々はあまりいません。
それが、三國氏の父親は「ニシン漁の大博打で大きな借金」を背負っていたというのです。
本書には、ニシン漁の話として「なかにし礼」の「兄弟」という本の内容を引用しています。
「なかにし礼」は1960年代に活躍した作詞家として有名ですが、1990年代末からは小説家としても活躍しています。
その自伝的小説「兄弟」(2001年 文春文庫)で、兄のニシン漁での巨額な借金について事細かく書いており、コロちゃんはその本も以前に興味深く読んでいたのです。
なるほど、三國氏は、その「ニシン漁」の巨額な借金を背負った家庭で、極貧の少年時代を送ったのかと、思わず本の世界に引き込まれました。
本書の中に、無口でめったに話さない父の一言として書いてある言葉が印象的です。
「大波が来たら逃げるな。船の正面からぶつかっていけ」
その後の人生で、何度も両親の言葉を思い出した、と書かれていますが、この少年時代が三國氏の出発点であり、その後の人生をかたち作ったのでしょう。
②札幌グランドホテルでの下働き
三國少年は、中学を卒業して、米屋の配達をしつつ、おいしかったハンバーグの味にひかれて、札幌グランドホテルに飛び込んで下働きに入り込みます。
札幌グランドホテルには、高卒でなければ入社できないので、下働きのパートです。そこでひたすら寸胴を洗います。
年上の先輩をクソミソにやっつけながら、毎日のように喧嘩していたと書いています。
そして「料理の神様」と言われていた、帝国ホテルの村上料理長ヘの紹介を受けるのです。
無我夢中で必死で生きている三國少年の姿が見えるようです。この時代は、まだハングリー精神というものが生きていました。
③帝国ホテルの鍋洗い
帝国ホテルに入っても、パートの鍋洗いです。正社員への壁は厚かったのです。
帝国ホテルの厨房は厳格なところで、社員でなければ野菜一つ切らせてもらえない。三國氏は、ひたすら鍋洗いをしていたそうです。
20歳になった時に、帝国ホテルのすべての店の鍋を洗ってから辞めて、北海道へ帰ろうと決意したそうです。
その最後の日に、村上料理長から呼ばれて、「君を大使の料理人に推薦しました」と言われたとは!
まさに驚きの大逆転劇です。
やはり、見ている人は見ているのでしょうか。これもドラマのようですね。劇的としか言いようがありません。
④ジュネーブで大使専属料理人に
大使の招待客が懇意にしているフランス料理店に毎日通い、前菜からデザートまですべてコピーしたとあります。
よくそんなことができたものですね。それができると分かっていたから、帝国ホテルの村上料理長も大使の料理人に推薦したのでしょう。
1週間寝る間を惜しんで準備して、無我夢中で料理を作り上げたと本書には書いてあります。
苦労は多かったのでしょうけど、実に楽しそうです。
20歳そこそこで、ここまでの評価を得られることは、すさまじい努力をしていたことは間違いないのでしょうけど、三國氏は楽しくて仕方がなかっただろうことは本書を読んでわかりました。
読んでも、カタルシスどばどばの成功物語で、気持ち良い思いを持ちました。
⑤フランス料理店を修行でまわる
大使との2年間の契約期間を終え、三國氏はヨーロッパのフランス料理店での修行の旅に出ます。
コロちゃんは、まったくフランス料理の素養がないので、読んでもわからないのですが、おそらく、どの店もどのシェフも一流の有名な店であり、料理人なのでしょう。
興味を引いたのは、三國氏の料理人同士の付き合い方です。
日本人に対する差別意識はヨーロッパ人の底流に流れているのでしょう。
厨房ではチームワークも大切だけれど、同時に競争の場であることを忘れちゃいけない。
「もういっぺん言ってみろ、俺は腹を切るぞ」が、三國氏の殺し文句だった書いています。
思わずニヤリと笑ってしまいました。
⑥帰国して、店を出す。そして成功
帝国ホテル料理長の村上さんは、おくりだす時に「10年間は向こうで修業しなさい。稼いだお金は自己投資しなさい」とアドバイスをしてくれたそうです。
その言葉通り、帰国して財布を出したら、1000円札一枚と小銭だけだったと書いていますけど、さすがにこれはホントかな?
お客さんに「お金と信用と技術、三國さんは三つの内二つがあればお店は持てます」と言われ、その通りになったとは、何とも伝説的ですね。
現実は、そうできない人がほとんどなんですすが。
やはり三國氏は努力と集中力で非凡な地位を気づきあげた特別な人なのでしょう。
四谷に店を持ち、有名になって、フランス共和国の勲章を受章といろいろ書いていますが、コロちゃんはその辺の名誉ということは、あまりよく知りませんし、わかりません。
本書は、三國清三氏の人生をたどった伝記ですが、極貧の境遇から、とんがってとんがってとんがって、そして大きな成功と評価を得るに至った面白い本ですね。一気に読み終わりました。
コロちゃんは、同じ時間軸を生きてきただけに、前半部分は共感を感じたところも多くありましたが、後半のフランス料理界の詳細に入ると、ちょっとよくわからないと思いました。
本書は興味深いですよ。ぜひ読むことをおすすめします
コロちゃんは、社会・経済・読書が好きなおじいさんです。
このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に障りましたらご容赦お願いします(^_^.)
おしまい。
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