【読書考】「 日露戦争 起源と開戦」(下)(和田春樹 著 岩波書店)
本書を読んで驚きました。
本書の考察が正しいのならば「日露戦争」は日本が韓国を我がものにするために積極的にしかけた「侵略戦争」といってもおかしくないと思いました。
本書は、「ロシア史家」である著者が、多くのロシア内部の文書を駆使して解析・考察したものなのでしょう。
1991年のソ連崩壊以降に公表された「皇帝ニコライの日記」や多くの「公文書記録」によるものと思われる緻密な「日露戦争直前」のロシア内部の動きは、まるで日々の動きを逐一追うようなリアリティーを持っています。
「皇帝ニコライ」「陸相クロパトキン」「ウィッテ」「ベゾブラーゾフ」「ヴォーガク」「アレクセーエフ」「アバザー」「ラムスドルフ」。
それぞれの詳細な動きと意見は「注記」の番号がついており、その内容が単なる推測ではなく、具体的な資料に裏付けられていることをあらわしています。
その経過によると「ロシア」は日本との戦争をあくまでも避けようとしていたと思えます。
司馬遼太郎は「坂の上の雲」で、「大陸を我がものとしようとする暴虐なロシアと、それと戦う可憐な日本」を描きました。
そして、「昭和の軍部」を批判し、「日露戦争」の時代を「美しい日本」と賛美していました。
あの内容はフィクションであり、歴史的には間違いだったのでしょうか。多くの日本人を魅了したあの史観は、いったいなんであったのかと嘆息する思いを持ちました。
本書で浮かび上がる「ロシアの国家像」は、権益がある「北満州の利権維持」のみを考え、あくまでも「日本との戦争」を避けようとする「ロシア」です。
それと対照的に、「韓国」を完全に我がものとするとともに満州へも侵攻しようとする「日本」の姿が見えてきます。
その後の昭和20年の「大日本帝国の破綻」を知る私たちとしては、大陸における昭和の戦争は、この時代からの延長線にあったことが改めて確認できます。
本書の視点が正しいのならば、昭和の時代の「韓国・中国への大陸政策」の策源が、この時代にあったことは間違いがないでしょう。
そして、その路線を戦略的に推し進めるための中心となったのは「外務大臣小村寿太郎」でしょう。
この時代に「日露戦争」を構想し、「ロシア」が望まぬ戦争を吹っかけて勝利し、「韓国」を手に入れて、その後の「大陸進出の路線」を軌道に乗せたことは、歴史的事実なのでしょう。
しかし、それは果たして「日本」のためになったのでしょうか。
これ以降の歴史を知る私たちとしては、ため息が出る思いを持ちます。本書は、司馬「坂の上」でつくられた「日露戦争」のイメージを覆す、すごい本です。
資料考証も裏付けもあるし、もっと読まれるべきとは思いますが、上下巻それぞれが「定価¥6.800+税」とは、あまりにも高いです。
このような良書は「文庫」として、安く、もっと多くの人に読まれるべきではないかとも思いました。
本書を、歴史を教えてくれる良書として高く評価したいです。久しぶりに歴史を堪能する思いを持ちました。
本書を、ぜひ読むことをおすすめします。絶対興味深いですよ。
コロちゃんは、社会・経済・読書が好きなおじいさんです。
このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に触りましたらご容赦お願いします(^_^.)
おしまい。
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