おはようございます。最近は日中は少し暖かな日も増えてきて、ちょっとほっとしますね。
コロちゃんは、散歩後にコーヒーを飲みながら新聞を読むのが日課です。このルーティンの時が一番ホッとするんです。
今日は、最近よく聞く「リスキリング」についてちょっとお話しようと思います。
1.岸田総理はリスキリングに5年で1兆円投入
岸田総理は、昨年2022年10月3日に、国会の所信表明演説で次のように発言しています。
「個人のリスキリングに対する公的支援については、人への投資策を五年間で一兆円パッケージに拡充します」
その後、今年1月4日の年頭記者会見でも、以下のようにリスキリングに触れています。
「意欲ある個人に着目したリスキリングによる能力向上支援」
そして、1月23日の国会での施政方針演説では、以下のように表明しました。
「リスキリングについては、・・・企業経由が中心となっている在職者向け支援を、個人への直接支援中心に見直します」
「リスキリングから転職まで一気通貫で支援する枠組みも作ります」
岸田さんは「育休中にリスキリング」と勇み足の発言もありましたが、それなりにやる気があると思われますね。
ただ、上記で赤い網掛けをしたように「個人」「個人」と強調してますね。これの意味を今日は考えてみようと思ったんです。
2.目的は成長率の向上
もちろん、個人の皆さんがリスキリング(学びなおし)でスキルと所得を上げようというのは良いですし、必要なことだと思います。
しかし、社会全体から見たこの政策の目標は、個人の「リスキリング」を通して日本の成長率を上げようということだと思います。
その目的は達成できるでしょうか。
下記の表で、ここ10数年の実質GDP成長率の推移を見てみましょう。平均すると1.0%を下回ります。
この表には出ていない最近のデータですと、昨年2022年は1.1%にとどまっていて、21年の2.1%からより減速しています。
2020年は下記の表であるように、コロナ禍で大きく減速していますから、20~22年の平均をとると、マイナス0.4%です。
現在の日本経済の潜在成長率は、0.3~0.5%とされています。すごく低いんですよね。
この成長率を上げようとして、「リスキリング」を推し進めようというのでしょう。
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/20/backdata/2-1-1-1.html
出典:厚生労働省 令和3年版 厚生労働白書 図表2-1-1-1 実質GDP成長率の推移(季節調整済前期比)より(2月14日利用)
3.個人がみんなで頑張れば成長率が上がるの?
確かにひとりひとりが、一生懸命がんばれば、全体が成長するような気はしますね。
しかし、コロちゃんはなんか違うんじゃないのかなーって、そこで感じたんです。
会社がもうからないのは、ダメ社員が多いからだ。頑張っている部長を学べっていう会社もあったけど、いやそれはビジネスモデルがもう古いんでしょうっていうお話もありましたよね。
〇〇フイルムは、デジカメが出てきた時に、業態転換でビジネスモデルを転換して成功しました。
社員個人が頑張って古い事業を復興したわけではないですよね。
個人の頑張りで、戦略の誤りを回復しようとするのは、日本の悪しき遺伝子です。
かつての大日本帝国陸軍の「失敗の本質」の例がありました。無理なんですよ。
今回も、個人のリスクリングで成長率を上げる前に、成長率が下がった理由をきちんと見た方がよいと思ったんです。
4.OJTとは? OFFJTとは?
コロちゃんは、今回の「リスキリング」奨励を聞いて、企業の「OJT」の減少の方を問題視した方がよいと思ったんです。
OJTとは、「On the Job Training」の略で、新人や未経験者に対して、実務を体験させながら仕事を覚えてもらう教育手法です。会社内の社員教育なんです。
もう一つOFFJTというのもあります。
OFFJT(Off the Job Training)は、職場を離れた場所での研修や学習全般を指します。業務を行う上で、必要な知識や技術を、座学やe-ラーニングなどで学ぶことです。
二つとも、生産性を上げる重要なアイテムです。
日本でのOJTは、1960年代にアメリカから導入されて、高度成長の原動力となりました。
その経済成長の源泉となるOJTが、日本では90年代から大きく低下しているのです。これでは生産性が上がるわけがありません。
https://www.kerc.or.jp/seminar/image/shiryo_takahashi.pdf
出典:内閣府 平成18年度年次経済政報告 概要より(2月23日利用)
上記の表で分かるように、日本のOJTが大きく低下した結果起きたことが、生産性の低下です。
繰り返しますが、日本では生産性の向上のための教育は、OJT・OFFJTという「企業内教育」で進めてきた歴史があるのです。
これは、世界のどこの国でも同じです。
世界中どこの国の方でも、学ぶことをやめれば生産性は上がらないのです。当たり前のことです。
よその国でも、日本と同じペースでOJTを減らしていれば、世界ランキングの順位は変わらないのですが、どこの国もそんな馬鹿なことはしません。
ウサギが昼寝していれば、カメは追い抜いていくんです。
下記の表は、OJT実施率の国際比較です。OECDには現在38ヵ国が所属していますが、日本はその諸国の平均以下の数値です。これでは生産性が上がるわけがありません。
この数値でも日本は韓国よりも下ですね。
これではGDP成長率や所得で韓国に追い越されつつあるのも当然の結果です。
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/18/backdata/2-1-10.html
出典:厚生労働省 平成30年版 労働経済の分析ー働き方の多様化に応じた人材育成のあり方についてより(1月19日利用)
5.社内教育を減らした結果が
日本企業がOJTを減らして、生産性を落としたのに対し、他国はそうはしませんでした。
日本の世界ランキングでの順位は、かつての世界2位から、30位台にまで落ちています。
下記の表が「一人当たり実質GDP」のランキングですが、日本は、35位、29位、30位に対し、韓国は、30位、30位、32位と、一部は韓国が上位になっています。
ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典:「各国の一人当たり実質GDPリスト」最終更新 2022年5月23日 (月) 13:14
その詳細は、下記のリンクでお読みください。
6.なぜOJTを減らしたんだろう
日本企業が、90年代以降にOJTをなぜ大幅に減らしたのかは、それぞれ個々の企業の事情があるかと思います。
おそらく、90年のバブル崩壊以降のデフレ経済を背景として、人件費を切り詰めるために非正規雇用を増やす中で、OJT も削減されたのでしょう。
そもそも、企業は非正規雇用者を対象に、積極的にOJTを行なうのでしょうか。
短期雇用者に、長期的な生産性向上のスキルを得るための教育投資を行うとは思えません。
下記の、非正規雇用者の推移のグラフを見てみましょう。
上記で紹介しました「教育訓練実施率の推移」のグラフとシンクロするように見えます。
非正規雇用者が増大することに合わせたように、ちょうどOJTが減少しているのです。
https://www.mhlw.go.jp/content/001041163.pdf
出典:厚生労働省 「非正規雇用」の現状と課題より(2月10日利用)
7.リスキリングは個人対象
このブログの冒頭で書きました岸田総理の、1月23日の国会での施政方針演説をもう一度お読みください。赤いマーカーをかけてある部分を一部再記します。
「リスキリングについては、・・・企業経由が中心となっている在職者向け支援を、個人への直接支援中心に見直します。」
これは、個人で頑張ってスキルを上げてくれってことですよね。
8.システムを変更しないで、個人に押し付ける日本の施策
戦後日本の経済社会では、長い間企業内訓練でスキルアップを図ってきました。
というか、会社員はそれ以外の時間を割くことは現実的にできなかったのです。なにしろ「24時間戦えますか」の「企業戦士」でしたから。
そして、OJTの中で生産性向上を進めてきたんです。
今になってOJTが減少した中で生産性が低下したから、今度は個人でリスキリングをしてくださいとは、ちょっとおかしいのではないでしょうか。
非正規雇用というシステムを変更して、かつてのように企業内でのOJTを増やすのが本筋かと、コロちゃんは思います。
9.これでは、日本の生産性を上げるのは無理
岸田さんとしては、企業に直接OJTを増やせとは命令できませんから、このような政策になったかと思われます。
しかし、この状況をみると、非正規雇用を大きく減らす方向に進まないと、日本の経済成長にはつながらないとコロちゃんは思うのですが、いかがでしょうか。
非正規雇用者を、みんな正規雇用者にすればいいんです。
そして社内でしっかりOJTで学習して生産性を上げてもらえばいいんです。
かつて1960年代は、そのやり方で高度成長に上り詰めてきたんですから。
コロちゃんは、社会・経済・読書が好きなおじいさんです。
このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に障りましたらご容赦お願いします(^_^.)
おしまい。
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