【社会考】「年金マクロスライド」を考える

社会

コロちゃんは、毎朝コーヒーを飲みながら新聞をバサバサと広げて読むのが日課なんですが、今日は、その新聞の社説に「年金マクロスライド」について書いていたのが目に止まりました。

コロちゃんは、年金リタイア生活ですから、「年金」の記事は、特に気になるんですよね。今日は、その話題をポチポチしてみます。

お若い方は、「かんけーねーよ」とお思いの方も、いらっしゃるかと思いますが、こういう社会システムについては、知っておくことは決して無駄にはならないと思います。

ちょっとだけでも、お読みいただければ幸いです。

1.社説に「年金マクロスライド」

新聞報道は、政治的に中立でなければなりませんが、社説は、その新聞社としての「主張」が書かれていますから、批判や評価など、厳しい内容も時々見られます。

今朝読んだ「社説」は、毎年行われる年金改定時に行なわれる、「マクロ経済スライド」という仕組みを改訂せよというものでした。

コロちゃんが読んだこの「社説」は、「年金水準の急落を避ける改定ルールに」というテーマで、4月2日の日経新聞に掲載されているものです。

お読みになりたい方は、以下のリンクをクリックして下さい。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD285000Y3A320C2000000/

その社説の主張を書く前に、「マクロ経済スライド」とは、どういうものかをポチポチします。

2.「マクロ経済スライド」とは?

「マクロ経済スライド」とは、現役人口の減少率と平均余命の伸びから調整率をはじき、物価や賃金の動向を反映させる毎年度の年金改定率から、差し引く制度です。

ただし、年金額がマイナスになる改定は行なわずに、翌年度以降に繰り越すルールがあります。

下記のグラフをご覧ください。

「日本年金機構 マクロ経済スライド」より

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/kaitei/20150401-02.html
出典:日本年金機構より

上記のグラフのように、物価と賃金の両方が上がっている時には、「現役人口の減少率と平均余命の伸びからの調整率」=「マクロ経済スライド」分が、年金改定率から差し引かれます。

下記のグラフを、ご覧ください。

「日本年金機構 マクロ経済スライドz」より

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/kaitei/20150401-02.html
出典:日本年金機構より

上記のグラフを見てわかるように、賃金物価の上昇が小さい場合には、マクロ経済スライドによる年金額の改定を行うと、年金額がマイナスになってしまうため、改定は行われません。

その代わりに、その分は次の年にロールオーバーで繰り越されます。

下記のグラフをご覧ください。

「日本年金機構 マクロ経済スライド」より

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/kaitei/20150401-02.html
出典:日本年金機構より

上記のグラフを見てもわかる通り、賃金・物価が下落した場合は、年金額は、賃金・物価の下落した分のみ引き下げられます。

このような、一度聞いただけでは、とても分かりにくい複雑な制度になっているのです。

今回2023年度の「マクロ経済スライドによる調整率」は、上記の理由で、過去2年分の繰越額が累積していました。

それを、今回一気に解消したために、マイナス0.6%と大きなものになってしまいました。。

何度も書きましたが、この「マクロ経済スライドによる調整率」は、金額がマイナスになる改定は行わずに、翌年度以降に繰り越すルールがあります

これは、制度創設時の想定で、通常の経済状態であれば、賃金の伸びが物価上昇を上回ると見ていたことによります。

一番上のグラフの状態が毎年行なわれると想定していたのですね。

ところが、実際には、賃金の伸びが物価上昇を下回ったり、マイナスとなっていたのが実態でした。

現実に起きたことは、下の二つのグラフだったということだと思います。

その結果、何が起きたのと言うと、今年の改定率をご覧ください。

①2023年度年金改定率

下記の表をご覧ください。

https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/001040881.pdf
出典:厚生労働省 令和5年度の年金金額改定について より(4月3日利用)

上記の表の、真ん中の下に「マクロ経済スライドによる調整」【▲0.6%】と出ていますが、その内訳は「令和3年度」と「令和4年度」の調整率のロールオーバー分です。

このように、今の年金制度には、支給される年金を減額する仕組みが入っているのです。

②2023年度の年金の実質支給額

上記の表で、コロちゃんは「68歳以上」に入りますから、年金改定額は「プラス1.9%」となります。

では、少し年金が上がるから生活は楽になるでしょうか。

そうはなりません。2022年通年の消費者物価指数は2.5%の上昇を示しています。昨年12月の消費者物価指数は4%の上昇でした。

これを加味した実質の年金所得は、下がることになります。

ここまでが、「年金マクロスライド」についての、予備知識です。

これを基にして、新聞で書いてあった「社説の提言」を見てみましょう。

3.新聞の社説での提言

提言は、以下のように語っています。

「年金額がマイナスになる改定は、行わず、翌年度以降に繰り越すルールがある」

「物価と賃金が大きく上がったときに、繰り越し分をまとめて調整する仕組みでは、物価高という厳しい局面で年金水準を急落させることとなる」

「毎年こつこつ調整していくほうが、高齢者世帯への影響は小さいのではないか」

「年金水準の激変を避けるためにもマクロ経済スライドの発動要件を見直すべきだ」

新聞社の社説を書く方も、今後の日本で物価と賃金が安定的に上昇するとは思っていないんですね。

だから、今後も調整額のロールオーバーが続くと、その後の年金の急落を見るぐらいなら、毎年少しずつ下がった方がよいとのお考えなのでしょうか。

この日経新聞の4月2日の「社説」のリンクは、上段にもありますが、もう一度以下にリンクしますので 、お読みになりたい方は、以下のリンクをクリックして下さい。

「社説」「年金水準の急落を避ける改定ルールに」というテーマです。

[社説]年金水準の急落を避ける改定ルールに - 日本経済新聞
生活が苦しいときにツケ払いの精算を求められるようなものだ。2023年度の年金改定で、物価や賃金の伸びに連動させる改定率が少子高齢化への対応で0.6%も差し引かれることである。年金額は4月分から67歳以下は前年度比2.2%増、68歳以上は同1.9%増となる。3年ぶりの増額改定だが、先の調整により、伸び率は賃金上昇率(2....

4.高齢者の生活はどうなるの?

一見、高齢者の生活をお考えになっているような、この新聞社の提言ですが、コロちゃんは、ちょっとイラっとしました。

だって、年金でぎりぎりの生活している高齢者の方へ、実質的な年金減額を前提として提案しているからです。

年金収入以外の所得がない高齢者はたくさんいらっしゃいます。それが、物価上昇によって年金の実質金額が低下する中で、さらに支給額を減額することは、何を意味するのかは明らかです、

先ほどの、新聞社の社説の提言の見出しは「年金水準の急落を避ける改定ルールに」でした。

コロちゃんは、その内容を読んで、これでは「年金水準をゆっくりした低下にさせるための改定ルールに」としか思えないと感じました。

コロちゃんのお願いは単純です。「生活のために年金水準を維持して欲しい」です。

別に「年金を上げてくれ」なんて贅沢なことは言いません。

せめて「現状を維持して欲しい」なんです。

この問題は、年金制度全体の問題であるとコロちゃんは思います。若い方には、また別のお考えもたくさんあると思います。

いろんな意見があっていいと思うんですが、知らないことは、「誤解」「不安定」「批判」に容易に進むと思うんです。

ぜひ、このような話題も、少しでも多くの方に知っていただきたいと思い、今日は「年金マクロスライド」をテーマとしました。お気に障りましたら、ご容赦お願いします。

コロちゃんは、社会・経済・読書が好きなおじいさんです。

このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に障りましたらご容赦お願いします(^_^.)

おしまい。

NoName_13によるPixabayからの画像

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