今日のテーマを見て「これ、何?」って思った方、それは正解です。コロちゃんは、市井のリタイア老人ですし、「金融緩和」は日本銀行の国家政策です。あんまり関係なさそーです。
しかし、最近物価が上がっていますよね。これは「金融政策」と密接に関係しています。
その黒田日銀総裁の「金融緩和」政策がうまくいっていればいいですよ。どうも、そうではなさそうなので、コロちゃんもちょっと心配になってきました。
コロちゃんの年金生活が、今後物価高で脅かされては困りますので、今日はちょっと、生意気にポチポチお話してみようと思います。
1.電気代上がったよね
12月と1月は、コロちゃんちの電気代が爆上げしました。そしてスーパーでも、日常の買い物する食料品の値上げが増えています。その内容は下記のリンクでお読みください。
昨年2022年の1年間を通しての「消費者物価指数」の上昇率は2.5%で、昨年12月の一か月の「消費者物価上昇率」は4.0%でした。
そして、総務省が2月24日に公表した消費者物価指数によると、23年1月の消費者物価は前年比4.2%となっています。
現在のところ、物価上昇の傾向に衰えは見えません。
しかし、日銀をはじめ専門家は、今年の後半には物価上昇率は減速すると予想しています。
2.日銀のお仕事は「物価の安定」
物価が上がるとコロちゃんも困りますけど、皆さんも困りますよね。では日本銀行とは何をするところなのでしょうか。
日本銀行のお仕事は「物価の安定」なのです。以下が、その日本銀行法の条文です。
「日本銀行の金融政策の目的は、物価の安定を図ることにあります。」
「物価の安定は、経済が安定的かつ持続的成長を遂げていくうえで不可欠な基盤であり、日本銀行はこれを通じて国民経済の健全な発展に貢献するという役割を担っています。」
日本銀行法第1条第1項、第2条
「日銀、何やってんのー、この物価高を何とかせいやー!」
思わずこう言いたくなりますけど、今、日銀は物価を上げることに全力を尽くしているのです。
下げる方じゃないんですよね。
現在日銀が目指しているのは「物価上昇2%と賃金上昇率3%」(22年5月黒田総裁講演)です。
だったら、「もう物価は2%以上、上がっているんだから、もういいだろう!」と言いたくなりますよね。
しかし、日銀は「現在の物価上昇は輸入物価の上昇による一時的なもの」だから、今年の後半には低下すると判断しているようです。
3.日銀の「金融緩和政策」は物価を上げるためのもの
現在、日本銀行が全力で行っている「金融緩和政策」は、お金を市中にじゃぶじゃぶに供給する金融政策です。
お金と世の中のモノは対応して存在していますから、お金の量を増やせば、世の中のモノの値段は上がるというのが「リフレ派」といわれる方たちの主張でした。
要するに、現在日銀は「異次元の金融緩和」という、物価を上げる政策に全力で取り組んでいるんですよね。
それでは、なぜ日銀が、そんなことをしているのかを、ちょっと時間をさかのぼってみてみたいと思います。
4.すべては「バブル崩壊」から始まった
出発点は、1990年のバブル崩壊ですね。下記の表は、実質経済成長率の推移ですが、1990年以降、現在まで30年間にわたって、低迷が続いています。
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000173082_1.pdf
出典:厚生労働省 近年の経済成長率と賃金上昇率の動向
ー バブル崩壊後の直近20年間の動向を中心に ー より(11月19日利用)
この経済低迷の原因として、1990年代から2000年代前半までは、「バランスシート不況」であったと経済学者の間では、おおむね合意ができていると言われています。
「バランスシート不況」とは、資産価値が暴落するなどして債務超過となると、企業は収益を借金の返済にあてるようになるため、設備投資や消費が抑圧されて景気が悪化することです。
要するに、バブル崩壊で、不動産や株価が大きく下落したために、不良債権の処理をしなければならなくなって、成長投資ができなくなったというわけですね。
しかし、その不良債権処理も2000年代前半で、ほぼ終了したはずなのですが、その後も経済成長率は上がらなかったのです。
5.デフレスパイラル
2000年代に起きていた経済現象は、以下のようなものでした。
物価が上がらないんです。むしろ緩やかに下がり続けました。
下記の表をご覧ください。2000年代全期間にわたって緩やかな低下が続いています。
2013年になって、黒田日銀の「異次元緩和」が始まってから、ようやく少し上向いてきています。
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/keizai_prism/backnumber/h30pdf/201816902.pdf
出典:参議院 消費者物価指数半世紀の推移とその課題より(3月5日利用)
日本が「デフレ」を認定したのは2001年のことでした。
そして、それから日本の社会で起こったことは、「デフレスパイラル」でした。
「需要減少→物価下落→企業採算悪化→所得減少→需要減少」
このループが、どこまでも止まりません。これでは困りますよね。
「バランスシート不況」は脱したはずなのに、ちっとも経済は回復しないんです。
そこで、その原因探しが始まります。
いろいろ言われましたね。
「中国から安い製品が入ってきているせい」
「IT化で無料サービスが増えた」
「既得権益者が改革を妨害している」などなど。
6.「デフレ」は原因なのか、結果なのか
この時点で、日本経済の成長の妨げになっているのが「デフレ」であることはわかっていました。
その時の論争は「デフレ」は経済成長を妨げる「原因」なのか、「結果」なのかです。
コロちゃんは、素人ですから、どっちでもいいように思ったんですが、詳しく見るとそうではありませんでした。
デフレが経済成長を妨げる「原因」ならば、デフレでなくなるまで「金融緩和」をして物価を上げればよいのです。そうすれば経済は成長できるのですから。
あくまでも目的は「経済成長」です。
そのための「デフレ脱却」のために「物価上昇」を許容するという考え方です。
しかし、デフレが経済成長を妨げる「原因」でなく、別に原因があるのならば、そちらの対策を行なわなければならないのであって、デフレ対策の「金融緩和」は必要ありません。
むしろ「金融緩和」は、劇薬のように大きな「副作用」がありますから、やらない方がよいのです。
ただ、この時点で経済成長を妨げる別の原因への対策となると、「規制緩和」にしろ、「増税して配分」にしろ、難易度が高い対策しかなかったと思います。
ですから、日銀の「金融緩和」が一番対策がたやすく、責任を押し付けやすかったのかもしれません。
結果としては、世の流れがすべて「金融緩和をするべし」と進んでいきました。
今から振り返ってみると、デフレは「原因」ではなかったのですが、これは10年間思いっきり「金融緩和」をやってみて、経済も成長せず、物価も上がらなかったからはっきり言えることでした。
7.日本国民は「金融緩和」を選んだ
この時点は、2012年です。
この時の日銀総裁は白川方明氏でしたが、「金融緩和」に慎重な姿勢でした。
日銀内部の専門家の間では、「金融緩和」に疑問を持つ方の方が主流派だったのではないかと思います。
しかし、当時野党であった安倍自民党が「無制限の金融緩和によるデフレ脱却」を掲げて衆議院選挙に勝利します。
「金融政策」が総選挙の争点となる異例の選挙でした。
「金融緩和」を主張する人たちを「リフレ派」と言います。
選挙で安倍自民党が「金融緩和で経済回復」を叫んで勝利すると、日銀も従わざるを得ません。
少々「金融緩和」の効果に疑問を持っていても協調の道を進みます。
そして、2013年に「リフレ派」の黒田日銀総裁が誕生して、「異次元の金融緩和」が始まるのです。
8.10年間「金融緩和」をしてみたけど、経済は回復しない
「金融緩和」は、日本経済を「デフレ」から脱却させるために、物価を上昇させる政策です。
予定したシナリオは以下の通りだと思います。
「金融を緩和すれば投資が進む」→
「投資が進めば、景気がよくなり物価が上昇する」→
「物価が上昇すれば、販売するモノの値段が上がることにより企業の売り上げが増加する」→
「企業の売り上げが増加すれば、企業収益が増加する」→
「企業収益が増加すれば、それが賃金上昇につながる」→
「賃金が上昇して消費が拡大する」→ループに入る。
しかし、いくら「金融緩和」のアクセルをふかしても、最初の「投資が進む」に進みませんでした。
そこで、現在は「賃上げ」で消費拡大という別の「経済の好循環」を提唱し始めたわけです。
昨年から今年にかけて、物価の上昇がみられますが、これは「輸入インフレ」で海外の原油などの価格が下落すれば、またすぐにデフレ傾向に戻ると日銀は判断している模様です。
9.経済成長できない理由は、潜在成長率低下によるものか
上記のように見ていくと、経済が成長できない原因はどうやら「デフレ」にではなく、別にありそうだとわかってきました。
「デフレ」は経済が成長できなかった「結果」だったのでしょう。
以下の表は、上記でも見たものですが、もう一度「潜在成長率」の紺の色の棒を見てください。
過去20年間の「潜在成長率の平均伸び率」は0.8%とあります。
https5//www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000173082_1.pdf
出典:厚生労働省 近年の経済成長率と賃金上昇率の動向
ー バブル崩壊後の直近20年間の動向を中心に ー より(11月19日利用)
そして、下記の表をご覧ください。データによりますと、日本の2021年度の潜在成長率は0.5%です。上記の表の過去の20年よりも、さらに下がっているのです。
https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fwww5.cao.go.jp%2Fkeizai3%2Fgetsurei%2F2232gap.xlsx&wdOrigin=BROWSELINK
出典:内閣府 月例経済報告より(3月5日利用)
こう見ていくと、日銀の「金融緩和」に経済成長率を上げる効果はなかったことがわかります。
潜在成長率は、むしろ年々下がっているのです。
10.日銀は、物価の番人に戻ってください
そもそも、物価の安定を法律で決められている日銀が、経済成長のための「金融緩和」を政治から強いられて、2%の物価上昇を目標とすることに、コロちゃんは違和感を持ちます。
庶民は「物価上昇」を歓迎しません。
収入が物価以上に上がる一部の方以外は、必ず生活に悪い影響が出ます。今年も大きな賃上げがある雇用者はごく一部の方たちだけでしょう。
来月4月には、日銀で黒田総裁が退任し、新しく植田総裁に代わると思いますが、日銀本来のお仕事の「物価の番人」として、国民の生活を守る視点から健闘してもらいたいと思います。
コロちゃんは、社会・経済・読書が好きなおじいさんです。
このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に障りましたらご容赦お願いします(^_^.)
おしまい。
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