【社会考】「防衛費増税」は先送り?

社会

おはようございます。今日は、この原稿で2本めとなります。コロちゃんは筆が遅いですから、一日2本もブログの原稿を書くのは相当困難です。

しかし、これが今のコロちゃんの「お仕事」ですから、一生懸命にポチポチしようと思います。今回は「防衛費増税が先送り」されそうだというお話をポチポチします。

1.「決算剰余金」1.3兆円を防衛費に

先日7月4日に、鈴木財務大臣が、2022年度の「決算剰余金」から、「1.3兆円を防衛力の整備にあてる」と言明しました。

「防衛費」は、岸田総理が2027年度にGDPの2%に増やすと発言なさっています。政府は、今後5年間で43兆を防衛予算とすると説明しています。

そしてその内容は、2023~27年度の「防衛力整備計画」で、増加分にあたる14.6兆円の財源を以下のように説明しているのです。

①税外収入(4.6~5兆円強)
②決算剰余金(3.5兆円程度、年7000億円)
③歳出改革(3兆円強)
④増税(法人税、所得税、たばこ税、1兆円強)

今回発表されれた鈴木財務大臣の「2022年度の決算剰余金から、1.3兆円を防衛力の整備にあてる」とのご発言は、上記4項目の②の「決算剰余金」(3.5兆円程度、年7000億円)についてのお話です。

この「②決算余剰金」(3.5兆円程度、年7000億円)から、5年間に渡って年「7000億円」を調達しようとしていたところ、2022年度は「1.3兆円」も調達できましたと発言なさっているのです。

2022年度の「決算余剰金」からの、もともとの予定額は7000億円だったのですから、それが1.3兆円に上振れすれば、次年度から4年間の調達が楽になります。

特にあちこちから反発が出そうな「増税」(法人税、所得税、たばこ税)の先送りも可能になります。

しかし、「決算余剰金」はそのような使い方をしても良いものなのでしょうか。

財務省はこの上振れ分について「将来の財源不足の時に備えてためておくのが基本」と説明なさっているようです。

「決算余剰金」の本来のあり方は、何かあった時のための「へそくり」と同じだというのです。それを今回は使ってしまおうというわけですね。

2.「決算余剰金」とは何か?

災害などの予測しがたい突発的な事態に対処するための予算として「予備費」という項目があります。

この「予備費」で使われないで残った残額が「決算剰余金」です。

「財政法」では、「決算剰余金」の1/2以上を国債の返済財源に充てると規定しています。

その「決算剰余金」の、国債返済の後の残った1/2を「防衛費」の財源として流用しようというのが今回の案です。

「決算剰余金」の見積額の0.7兆円の根拠は、2021年度までの過去10年間の平均だと言います。

しかしこの10年間の金額は、年度ごとに見ると2500億円から4兆5000億円とばらつきがあり、今後も0.7兆円が確保できるかは不明です。

このプランは、最初から「予備費」を、この「防衛費拠出」を前提として積み増しておかない限り、先行きの持続性が無い案だと思うのですが、いかがでしょうか。

そもそも、「予備費」とは、最初にご紹介したように、「災害などの予測しがたい突発的な事態に対処するための予算」です。

「防衛費」は、「災害などの予測しがたい突発的な事態」ではありません。

3.「防衛増税」は「25年以降に先送り」・・かな?

上記で書きました「防衛費増加分」14.6兆円の財源の中の「④増税(法人税、所得税、たばこ税)」については、先送りが決まっています。

当初は「2024年度以降の適切な時期に実施」となっていたのですが、6月16日に出された「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針2023)では、以下のように変わっています。

「25年以降のしかるべき時期とすることも可能となるよう、柔軟に判断する」

後からの文書で「2024年」が「2025年」に、上書きされて変更されているのです。

ただ、この「先送り」について、岸田総理は、地方紙での「書面での質問」に否定する回答を寄せています。

質問内容は「経済財政運営の指針「骨太方針」で防衛増税の2025年以降への先送りを示唆したとされていること」についてで、回答は以下の通りと報じられています。

「防衛力強化のための財源確保のフレームが変わることはなく、先送りしたとは考えていない」

「政府・与党で緊密に連携し、柔軟に判断したい」

同様の内容は、全国紙では流れていないので、なんとも首を傾げる内容です。ひょっとすると与党の自民党の中で議論が続いているのかもしれませんね。

4.自民党「財政再建派」と「積極財政派」

今の自民党には「財政のあり方」を巡って二つの潮流の組織があります。

一つは「財政再建派」による「財政健全化推進本部」(額賀福志郎本部長)で「持続可能で秩序ある財政」と「財政健全化」を主張しています。

こちらは、岸田総理の派閥である宏池会の議員も多数参加しています。財政健全化のためなら「増税」も視野に入れているのが特徴です。

もう一つは、「積極財政派」の「財政政策検討本部」(西田昌司本部長)です。

こちらは、「防衛費増額」や「少子化対策」の財源として、「消費増税」や「歳出カット」は避けるべきと主張しています。

増税を否定し、赤字国債をいくら積み上げても構わないとするのが特徴です。

現在の日本の政治は、自民党内でのこの二つの流れのせめぎあいの結果、真ん中に着地しているのが現状だと思います。

岸田総理の岸田派(第4派閥 45人)は、「財政再建派」が多く、安倍元総理の安倍派(第1派閥 101人)は、「積極財政派」が多いとされています。

コロちゃんは、野次馬みたいなものですが、現役世代の残した借金の請求書を、子や孫たちにつけ回しするのは恥ずかしいですから、どちらかというと「財政再建派」を支持しますね。

もっとも、ただの市井のおじいちゃんですから、遠くで「キャンキャン」と吠えてるだけですけど。

5.「増税」を唱えると選挙で負ける?

コロちゃんは、まもなく70歳になろうとするおじいちゃんですから、自慢ではないですけど長~く生きています。

その長~く生きてきた間に、たくさんの選挙をみてきましたけど、日本では「増税」を唱えると選挙で負けるんです。

1979年には、大平正芳総理が「一般消費税」を提唱し、衆議院選挙の直前に撤回しますが、過半数割れの敗北となり、「40日間抗争」という自民党内での争いとなっています。

「40日間抗争」とは、以下のことです。

(国会での首相指名に、自民党から大平正芳と福田赳夫の二名が出るという前代未聞の事態となり、最終的に、大平正芳が総理に選ばれた)

1987年には、中曽根康弘総理が「売上税」を国会提出しましたが、参議院補欠選挙で敗北、統一地方選挙でも退潮、「売上税法案」は、一度も審議されないまま廃案となりました。

日本で消費税が最初に導入されたのは、竹下昇総理時の1989年です。その後に行なわれた参議院選挙では、自民党は議席が半減するような惨敗をして、総理退陣となりました。

1994年には、細川護熙総理が、消費税の代わりに税率7%の国民福祉税を導入する方針を突如発表しましたが、国民の反発から直ぐに撤回となり、総理は2か月後に退陣となりました。

1994年には、村山富市総理が、消費税率の3%から5%に引き上げる法案を提出。1995年の参院選挙では、社会党が大敗北しています。

1997年には、橋本龍太郎総理が、予定通り消費税の税率を3%から5%に引き上げましたが、その後の1998年の参議院選挙で敗北し、退陣しています。

2010年には、当時の菅直人総理が、「10%を参考に」と増税に言及して、その後の参議院選挙で民主党が敗北しています。

ちょっと調べただけでも、総理大臣が「増税」に言及すると、その後の選挙で負けるのが通例です。コロちゃんは、このほとんどをリアルタイムで見聞きしてきました。

この「増税を語ると選挙で負ける」とのトラウマを、現在の政治家が心に刻んでいることは間違いがないことだと思います。

現在ほとんどの「経済学者」や「エコノミスト」の専門家は、皆一様に「増税が必要」と発言していても、政治家と国民の大部分が「増税」を忌避する理由は、上記しました歴史にあるのだと思います。

しかし、政治家は「国家百年の大系」を語り、作り、実行するのが、お仕事です。

如何に選挙で負けようとも、身を捨てても、日本の将来のために最善の対応をしてもらいたいと、コロちゃんは考えます。

6.「防衛費増額」への「もう一つの視点」

コロちゃんは、いつも新聞をバサバサして、興味のある点をじっくり読みます。そして、もっと知りたいことがあると本を探したりもしています。

この「防衛費」についても、コロちゃんはとても興味を持っています。

その中で。1920年代から1950年代にかけて、長く活躍した石橋湛山と、高橋是清との対談とされる言葉が新聞で紹介されていました。

「軍艦は自ら物を作る力を欠いている。このように再生産能力のない物ばかり国民が作っていたら、現在ある物資の蓄積が尽きると同時に、国民の生産力は消滅してしまう。ここに国家が、軍事費を無限に支出し得ない理由がある」
(東洋経済新報 35年6月15日)

資金調達手段が「増税」であろうと「国債発行」であろうと、国防費を増やせば、その分だけ国内の生産資源を費消するというのです。

この、マクロな観点からの、生産力を産まない軍事費を増やすことは、投資の抑制につながるために、経済成長の観点からはマイナスになるというのです。

そして、「経済力が国防の基盤であり、その逆ではない」と語っています。

コロちゃんは、この記事を読んで深く感銘を憶えました。この記事を読んでみたい方は、下記のリンクのクリックをお願いします。

経済力こそ国防の基盤 財政政策と国債増発の行方 - 日本経済新聞
ポイント○国防費の増加分だけ国内の生産資源費消○石橋湛山の主張は戦後の高度成長で実現○経済成長しない日本は防衛費の負担重く防衛費を国内総生産(GDP)比2%に引き上げることは妥当か。その負担を増税で賄うべきか、国債で賄うべきか。防衛費を巡る議論について、日本の近現代史から学ぶことは多い。幕末開港後の日本の指導者たちは、...

7.「大砲かバターか?」

コロちゃんは、上記の「防衛費増額」や「少子化対策」を見ていると、日本が曲がり角に来ているように思えてなりません。

「大砲かバターか?」という選択肢があります。

かつて1930年代のナチス・ドイツが、「バターより大砲」と唱えたことで有名です。

今回の「防衛費2%」と「少子化対策倍増」は、言ってみれば「大砲もバターも」と言えます。そもそも設定に無理があるのです。

その無理の後始末をするのは、後世の子どもたちとなるのでしょう。

そもそも「防衛費増額」は、国家の生産性を上げることに何の貢献もしません。

上記の石橋湛山と高橋是清の対談で語っているように「軍艦は自ら物を作る力を欠いている・・・国民の生産力は消滅してしまう」のです。

それを承知の上で「大砲もバターも」と、二兎を追うのならば「増税」を提示すべきではないでしょうか。

選挙で負けるのが怖くて、口当たりの良いことばかりを言うのでは、施政者として覚悟が足りないとしか言えないと思いますね。

コロちゃんは、社会・経済・読書が好きなおじいさんです。

このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に障りましたらご容赦お願いします(^_^.)

おしまい。

Jonathan SautterによるPixabayからの画像

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