おはようございます。今朝もどんよりした雲の下、朝のワンコとの散歩をしてきました。玄関わきの猫の額ほどの庭には、草がボーボー生えていましたので、散歩後に少しずつ抜くことにしました。
コロちゃんは、庭いじりはほどんどやったことが無かったのです。
しかし、亡き妻が生きている頃には、庭を一生懸命手入れしていましたので、コロちゃんも、今ではちょっとは手入れして雑草抜きぐらいはやるようにしています。
亡き妻は、喜んでくれるかなー。いやいやコロちゃんは雑ですから、「中途半端な事すんな!」と怒鳴られるかも?
今日は、久々に【読書考】をポチポチします。
1.今一番注目を集めている話題の「少子化」
現在「少子化」問題は、いろいろな発表が続いていて、新聞でも何度も1面で取り上げられている大きな問題となっています。
コロちゃんも、このブログで何度もこの話題を取り上げています。
日本の「少子化」は、単に人口減少の問題だけではなく、政治課題・政策問題でもあり、人々の生き方や人生観までも含んだ大きな問題となって、現在私たちに前に出てきているのです。
そのような状況下で、ちょうどその問題意識に一石を投じたような本を、コロちゃんは見つけました。
「なぜ少子化は止められないのか」という本です。
著者は、日本総研の上席研究員で地方創生や人口問題を研究なさっている方です。
この本は、「統計数字」のわかりにくい羅列ではなく、主に対話方式でわかり易く問題を描き出しています。
そして、興味深いことに、コロちゃんが知らなかった最近の傾向や事実なども、いろいろ教えてくれる内容となっているのです。
言ってみれば「目からうろこ」の事実ですね。
すでにマスコミが「少子化問題」のあれこれを教えてくれていますから、コロちゃんは今更新しい内容はあまりないだろうと思って読んでいたのですが、いやいやそうではありませんでした。
知らなかった事実を知ることは「喜び」ですね。それでは本書の内容を簡単に紹介します。
2.「なぜ少子化は止められないのか」(藤波匠 日経プレミアシリーズ 2023年)
まず、本書は人口減少のスピードを上げて、日本の現在の位置を問題提起しています。
2022年の出生数は80万人をわりこみましたが、その減少のスピードを提示しています。
2000~2015年までの人口減少のスピードは年率1%程度でしたが、2016年以降は年率3.7%に急加速していると言うのです。
この2000~2015年と2016年以降の「違い」を頭においてください。後からその「違い」の理由が出てくるのです。
そして、この人口減少のスピードアップは、「根深い日本社会の構造問題」にあると喝破するのです。
3.加速化する少子化
本書では、対話と図表によって説明が進んでいく形式をとっていますので、理解しやすいのですが、このブログでは、コロちゃんが瞠目した点を簡単にポチポチします。
本書でまず指摘しているのは、過去の「出生数予測」を大幅に上回る減少です。
2015年までは、年間100万人あった出生数が、2022年には年間80万人を割り込んでいます。
わずか7年で20%以上の減少率です。
2000年から15年かけて20万人減ったわけですが、2015年以降はわずか7年間で20万人減っているのです。
そして、本書ではその急速な減少をとりあげて、「団塊ジュニア世代」が「少子化」の流れを作ったとしています。
「団塊ジュニア世代」は、1970年代生まれの人たちです。
この方たちは社会に出る時期が「バブル崩壊での不況期」と重なり、そのことにより「非婚・晩婚」に拍車がかかったとしています。
「団塊ジュニア世代」の出生数は、年間200万人近くあったのに、その子の世代は120万人程度で、4割減にもなったのです。
著者は、この時期に「非婚・晩婚化」が進んだのは間違いがないと断言しています。そして、その理由の一つとしては、「大学進学率の上昇」もあったとしているのです。
大学進学によって、結婚と出産期が4年間後にずれることによる影響を言っているのですね。これは「晩婚化」による影響ですね。
しかし、著者は、足元で進む「少子化」は、親となる「出産期人口の減少」と、「非婚・晩婚化」だけが理由でなく、もう一つの第3の理由があったとしているのです。
4.なぜ子どもは減るのか
本書では、最近は年に3.7%のペースで出生数が減少しているから、このままのペースが続くと、再来年の2025年に年70万人を割り込むと言っています。
さらに、2022年の77万人から半減するのは、2041年と、あと20年もないと、本書では警鐘を鳴らしているのです。
そして、前項で触れた「少子化」が進む第3の理由が明らかにされます。
それは、少子化の一番大きな原因は、既に「非婚・晩婚」ではなくなっているという衝撃の内容です。コロちゃんは、これにはびっくりしました。
本書では、グラフで表示されているのでわかり易いのですが、「出生数変化の要因分解分析」という分析方法を使っています。
「出生数の変化」を三つの要因に分解しています。「人口要因」「婚姻率要因」「有配偶出生率要因」です。
この数値を1995~2020年の間の5年ごとにグラフ化しているのです。
そうしますと、2005年までは「婚姻率要因」(非婚・晩婚化)がマイナスに大きく張り出しているのですが、その後の2010年以降は、小さくなってきています。
このグラフを見ると「少子化」の主因が「非婚・晩婚」であったのは、せいぜい2005年までだったというのです。
2005年以降に「少子化」の主因となったのは、「人口要因」です。
そして、その次に一番大きく変化したのが「有配偶者出生率要因」です。
2015年には、出生数を10万人プラスに押し上げていた「有配偶者出生率要因」が、2020年には逆にマイナスに4万人押し下げました。
このプラスからマイナスのトータル14万人の振れ幅が、少子化ペースの加速化をもたらしたというのです。
これが、少子化の「第3の理由」です。2015年から2020年の間に出生数を大幅に下げる「有配偶者出生率要因」の変化があったということです。
「有配偶者出生率要因」のマイナス化とは、「結婚した人の出生率」の低下です。この時期以降に結婚した人たちの意識が大きく変わったとしています。
若い夫婦の間で、「子どもはいなくてもいいよね」「子どもは1人でいいよね」という意識に変わってきたということなのでしょう。
著者は、この理由を「結婚と出産を分けて考える思考への移行」が、出生数の減少に大きく影響をしていると語っています。
この若者の「結婚と出産を分けて考える思考への移行」が、データを見ると2005年から2010年の間に起こって、「有配偶者出生率」を、大きく押し下げたと言っているのです。
2020年のグラフでは、それ以前と違って、「人口要因」「婚姻率要因」「有配偶出生率要因」の三つの要因全てがマイナスになっています。これでは「少子化」が異様な速さで進行するわけです。
このグラフでは、2020年のマイナス16万人(2015年と対比)のグラフを見ると、最大の要因は「人口要因」で、次が「婚姻率要因」そして「有配偶者出生率要因」と続きます。
「少子化対策」は、一つの対策で効果が上がるものではないことがこれで分かります。
5.人口減少と経済縮小の悪循環
ここで、本書は子育て世代の経済環境をとりあげています。本書では、大卒男性正社員の年代別の実質賃金カーブの図表を示しています。
それを見ると、バブル世代だった1960年代半ば生まれの世代までは、おおむね前世代の年収カーブをトレースしています。
しかし、それ以降に生まれた世代は、若くなるほど年収カーブが下方にシフトしています。
バブル世代より10歳若い団塊ジュニア世代は、40歳代後半の年収が150万円ほど少なくなっています。
この理由として、著者は二つ理由を挙げています。
一つは、賃金の下方硬直性です。一度上げた賃金は景気が悪くなっても、なかなか下げにくい。
そのために、景気悪化の時に企業は、年配者の賃金はそのままにして、本来ならばそのまま上げていく賃金に下押し圧力がかかります。
企業にとっては、賃金を上げないことは、賃金を下げるよりも簡単なことだからです。
もう一つは、バブル崩壊後の日本では、大学進学率が上がって大卒者が増えても、高度人材のパイが増えていないことだと言います。
大卒者の増加の一方で、給料の高い職業のパイは増えず、結果としてそれ以前は、高卒の人のついていた職業に、大卒者が付き、大卒男性の平均給与を押し下げることとなったとしています。
この「経済環境」が、若い方の出生意欲に大きな影響をもたらしたと、著者は語っています。
6.日本社会の構造的問題
本書は、この他にも「現金給付を多少増やしても、少子化は改善しない」とか、フランス・ドイツ・フィンランドの例とか、多岐な論点を展開しています。
そして「2030年までが最後のチャンス」と書いています。
このフレーズは岸田総理の先日の「こども未来戦略会議」で使われているものと同じですね。
しかし、本書の内容はだいぶ違います。「非正規雇用」の女性の問題をとりあげています。
現在、女性の過半数が「非正規雇用」で働いています。この「非正規雇用」の女性の結婚・出生に向けた意欲(出生意欲)の低下が顕著だというのです。
すなわち社会保障的な支援だけでは、「少子化」を食い止めることは難しく、並行して賃金を引き上げ、雇用環境を改善する取り組みが必要だとしているのです。
本書は、このように「日本の構造的問題」にまで、踏み込んで議論をしているのです。
また、「やはり経済成長は不可欠」「現金給付で少子化は改善するのか」「経済を上向かせるポイント」とか多岐にわたる議論を繰り広げています。
コロちゃんは、とても刺激されて、一気に本書を読み終えました。
本書の最後に「国民意識の変化も重要だ。『子育ての社会化』を是認することはもとより、高齢者に偏った社会保障の在り方を見直すには、年配者も考え方を変えていかなければならない」とありました。
コロちゃんは、言うまでもなく「年配者」です。そして現在の政治を生み出してきた世代です。
「少子化」は、過去の政策の結果であることを思うと、高齢者には、現在の「少子化」の責任があると言えるのでしょう。
コロちゃんは、しっかり知識を得て、発信することによって、その責任の一端なりを担おうと思っています。
本書は興味深いですよ。ぜひ読むことをおすすめします。
コロちゃんは、社会・経済・読書が好きなおじいさんです。
このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に障りましたらご容赦お願いします(^_^.)
おしまい。
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