【社会考】「中間層」は細っているのか

社会

コロちゃんは、世の中をまったり見渡すのが趣味です。(「のぞき」はしてないです)
ジ~ (・_・|

ですから、いろんなことを、時々気気づくことがあります。今日は、日本の「中間層」についてポチポチお話します。

1.「ジニ係数」への疑問

先日、「世界の中の日本のポジション」と題して、日本と世界の比較をブログで書きました。そのブログをお読みになりたい方は、下記のリンクをクリックしてください。

【社会考】世界の中の「日本」のポジション

上記のブログの中で、日本の格差を表す「ジニ係数」を引用しています。この表を、もう一度下記に引用します。

https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-08-09.html
出典:厚生労働省 令和2年版 厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考えるー 図表1-8-9 所得再分配によるジニ係数の改善の推移 より(3月12日利用)

この「ジニ係数」の表によれば、再配分所得ジニ係数(青のメッシュ)の棒グラフの数値は、2005年以降2017年まで、ゆっくりと低下しています。

この表示は、2005年以降の日本社会で、格差が少しずつ縮小していることを表します。

一般的な見方では、日本社会では2000年代・2010年代にかけて、格差拡大が進行しているように考えられていますが、この数値はそれと違っています。

この時代に格差が縮小していたということは、コロちゃんの感覚としては違和感があります。

まあ、格差は、底辺の底上げがあれば縮小しますが、上層が減少しても縮小しますから、今日は「中間層の増減」に注目して、その辺のことをポチポチと調べてみたいと思います。

2.OECD「プレッシャーの下で圧迫される中間層」報告書

2019年に、OECDは「プレッシャーの下で圧迫される中間層」という報告書を出しています。

その報告書では、「中間層」を「等価可処分所得の中央値の75%~200%の所得がある人々」と定義しています。

「等価化処分所得」とは「等価可処分所得=世帯可処分所得/√世帯人員」のことです。各世帯は人数が異なりますので、所得を比較する時にこの計算式を使います。

その中で、日本の「中間層」の規模は65%で、調査対象国35ヵ国の中で14位であると書かれています。OECD諸国全体の「中間層」の平均は61%ですから、それよりは少し上に位置しますね。

日本の「中間層」の規模は、だいたいOECD諸国の真ん中より少し上とみるといいかなと思いました。

以下の引用をご覧ください

「OECDDプレッシャーの下で圧迫される中間層」報告書

https://www.oecd.org/tokyo/newsroom/Middle-class-2019-Japan.pdf
出典:OECDD

また、この調査のOECD 諸国全体の「中間層」の割合の推移ですが、1980年代半ばの64%が、2010年代半ばには61%となっています。

OECD 諸国全体では、「中間層」の減少が進行していることがわかります。

「中間層」の減少は、世界的な傾向なのでしょうか。これだけでは、まだはっきりとはわかりませんね。

3.中間層の基準

上記のように、「低所得層」「中間層」「高所得層」のお話をすると、自分の位置はどの辺なのかなと思いますよね。

中間層の基準として「等価化処分所得の中央値の75%~200%の所得がある人々」というものがあります。

2015年の「国民基礎生活調査」(厚生労働省)を用いると、等価可処分所得の中央値は約245万円なので、中間層の所得域は「約183万円~489万円」となります。

そうすると、コロちゃんは、ぎり「中間層」に入りますね。だいぶ下の方ですが。
(。・・。)

だけど、183万円で中間層なの? 月収15万円ですよ。

これでは食べるのが、やっとじゃないのかなー。
(後で調べなおしたところ間違いありませんでした)

4.日本の中間層の推移:国民生活基礎調査(1985-2015)に基づく推計

ここからは、「日本の中間層の推移:国民生活基礎調査(1985-2015)に基づく推計」というレポートについてお話します。

(下記のリンクでレポートの全文が読めます)

「国民生活基礎調査(1985-2015)に基づく推計」

https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2019/191011/201901012A_upload/201901012A0016.pdf
出典:令和元年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業))「高齢期を中心とした生活・就労の実態調査(H30-政策-指定-008)」日本の中間層の推移:国民生活基礎調査(1985-2015)に基づく推計1 より(3月15日利用)

このレポートも、「中間層」をOECD基準と同じ「等価化処分所得の中央値の75%~200%の所得がある人々」として計算しています。

この分類方式が、この種の調査では一般的になっているようです。

この調査では「中間層」の所得域は2015年で「158.4万円~422万円」となっています。

ただ、この方式ですと、毎年の所得域が異なってしまいますから、このレポートは、1985年の「中間層」の所得域を「161.8万円~431.4万円」に固定して推計しているそうです。

(レポートには各年での所得域を使った推計値も出ています)

①格差縮小の真相

下記の表をご覧ください。

https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2019/191011/201901012A_upload/201901012A0016.pdf
出典:令和元年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業))「高齢期を中心とした生活・就労の実態調査(H30-政策-指定-008)」日本の中間層の推移:国民生活基礎調査(1985-2015)に基づく推計1 より(3月15日利用)

上記の表は、日本の「高所得層」「中間層」「低所得層」の割合の推移の表です。

この表を見ると、2000年代になってからは、「中間層」だけでなく、「高所得層」も減少しているんですね。

増えているのは「低所得層」だけです。これでは確かに「格差」は縮小します。上層と中層がともに下に落ちているんですから。

全体が下にスライドしているんです。こんな「格差縮小」は、ちっともうれしくないですね。

②「中間層」の減少と「低所得層」の増加

上記でご紹介したOECDの調査では、日本の「中間層」は65%とありましたが、そちらはデータが1980年代のものなのかもしれません。

このレポートでは、「中間層」が、1985年(64.0%)から2015年(56.9%)へと、年々右肩下がりに減少していった様子がよくわかります。

また、「低所得層」は、1990年代末から増えてきていますね。1994年(21.1%)から2015年(33.1%)まで上昇し続けています。

バブル崩壊が1990年ですから、コロちゃんの目にはその時点で景気が最盛期に見えましたが、すでにその時には「中間層」の減少が始まっていたのですね。

この表で「低所得層」の増加が始まった1990年代末には、1998年に長期信用銀行と日本債券信用銀行が破綻しています。

1999年には、大手銀行に7.5兆円の公的資金が注入され、実質国有化されることが起きていたことを思い起こします。

1990年代の末に、日本には金融危機が起こっていたのです。

その頃を起点として、「低所得層」の増加が始まっていたことが、この表ではっきりわかります。

③二つの時代

このレポートには、「1885ー2000」と「2000-2015」と二つの時代に分けて、その間の「低所得層」「中間層」「高所得層」の増減が、一目でわかる表が掲載されています。

下記の表をご覧ください。

https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2019/191011/201901012A_upload/201901012A0016.pdf
出典:令和元年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業))「高齢期を中心とした生活・就労の実態調査(H30-政策-指定-008)」日本の中間層の推移:国民生活基礎調査(1985-2015)に基づく推計1 より(3月15日利用)

この表を見ると、1985-2000年と2000-2015年に、「低所得層」「中所得層」「高所得層」のそれぞれが、どのように増減していったのかが一目瞭然にわかります。

●1985ー2000

1985 年から 2000 年の間では、「高所得化」が進んでいます。

「低所得層」は 2.4%ポイント減少し、「中間層」は 4.6%ポイント減少して、「高所得層」は 7.1%ポイントの大きな増加となっているのです。

1986~1989年が「バブルの時代」です。それが反映されたのでしょう。

この時代は、所得分布の 2 極化や高所得化が進行することにより「中間層」が縮小したといえるのでしょう。

●2000ー2015

2000年から2015年には、「低所得化」が進みました。

「中間層」が 2.5%ポイント減少、「高所得層」も 4.5%ポイント減少したのに対し、「低所得層」は 7.0%ポイントも増加しているのです。

「2000 年から 2015 年にかけては低所得化が進むことにより、中間層が見かけ上は横ばいに推移しているようにも観察されるが、実際は中間層の衰退が生じていると評価してよい」と記載されています。

一つ上の表の、横ばいの線を「中間層」の衰退とみているのです。

●各所得層の変動による「要因分解」

このレポートは、その「中間層」の推移を「要因分解」して、その内容を解析しています。

階層が「中間層」から上層・下層へ移動したその要因を解析できるんです。そんなことができるんですね。コロちゃんは、びっくりしました。

その要因分解は、以下のようにして行なうそうです。

「中間層の推移の要因分解  分解方法」

「各所得層の人口シェア(M)の 2 期間の変化を、各年齢階級(k)内にしめる所得層割合の変化(ここでは所得層割合の変動要因という)と各所得層にしめる各年齢階級の人口シェア(φ)の変化(ここでは人口構成要因という)に分解を行う」

https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2019/191011/201901012A_upload/201901012A0016.pdf
出典:令和元年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業))「高齢期を中心とした生活・就労の実態調査(H30-政策-指定-008)」日本の中間層の推移:国民生活基礎調査(1985-2015)に基づく推計1 より(3月15日利用)

凄いですね。コロちゃんには、さっぱり理解できません。専門家とは、ここまでできるのかと尊敬します。その結果が以下の通りです。

○階層が移動する二つの要因

一つは「人口シェアの変動」です。

年齢階級別の所得層の特徴を整理すると、勤労世代(18-64 歳)は、年齢が上昇するにつれて高所得層が増加し、中間層・低所得層が減少します。

高齢者は、高所得層・中間層は減少し、低所得層が増加します。そのため高齢者のほうが現役世代よりも、中間層の人口シェアが小さくなります。

二つ目は、「各年齢階級内にしめる所得層割合の変化(所得層割合の変動要因)」です。

1985 年から 2000 年にかけては、現役世代の子ども、若年(18-39 歳)・中高年(40-64 歳)では、所得分布の二極化が進んでいます。

2000 年から 2015 年にかけては、子どもや若年層では低所得層が減少し、中間層・高所得層も増加しています。

○「分析結果」

ここでは、その結果のみを紹介します。その内容を詳しく知りたい方は下記のリンクからレポート全文をお読みください。

「日本の中間層の推移:国民生活基礎調査(1985-2015)に基づく推計」分析結果より

「中間層が大きく縮小したのは、1985 年から 2000 年であり、所得分布の 2 極化や高所得化が進んでいる。その原因としては、人口高齢化と各年齢階級内での中間層割合の低下があり、この時期は後者の所得分布の変動による影響のほうが大きい」

「2000 年から 2015 年は中間層が横ばいに推移あるいは低所得化が生じている。その原因としては、人口高齢化により中間層割合は減少しているが、中間層の所得域も低下することで中間層割合が増加しているため、それらの影響が相殺されている」

「このように 2000 年代以降は、全体的な所得水準の低下により中間層の所得域も低下するため、中間層の減少が見えにくくなっている。しかし 1985 年の中間層の所得域を用いた場合は、所得分布の低所得化による中間層の縮小が観察されており、日本の中間層の家計は以前よりも厳しい家計運営となっている可能性がある」

https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2019/191011/201901012A_upload/201901012A0016.pdf
出典:令和元年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業))「高齢期を中心とした生活・就労の実態調査(H30-政策-指定-008)」日本の中間層の推移:国民生活基礎調査(1985-2015)に基づく推計1 より(3月30日利用)

この分析結果を読むと、1985-2000年においての「中間層の縮小」は、「高所得者」へ移行した層が多かったからということなのでしょうか。バブル経済の時代でした。

また、2000ー2015年で、「中間層」の減少が1985-2000年よりも少なくなっているのは、高齢化の影響だとしています。

そうであるならば、この「高齢化」と「中間層」の減少は今後も続きますね。

いずれにしろ、2000‐2015年の間で、「中間層」が減り、「低所得層」が大きく増えていることは間違いありません。

5.このレポートから分かったのは「中間層」が減ったのは「社会全体の低所得化」のため

ここまで見てきたことを「中間層」についてまとめてみます。

1985-2000年の「中間層」は、マイナス4.6ポイントと大きく細りました。
2000-2015年の「中間層」は、マイナス2.5ポイントと小さく細りました。

日本社会の「中間層」は、1885ー2015年の30年間に、7ポイント細ったのです。

そして、日本社会の「低所得層」は、2000-2015年は、7ポイント増えているのです。

これを見て、コロちゃんは思ったんでよね。

2000年から2015年の日本の「中間層減少」は、所得の二極化が起きたためではなく、社会全体の「低所得化」が起きたためだったということです。

これからの日本社会で、分かち合えば中間層は増えるのでしょうか?

それとも、減っていく「中間層」を争う「椅子取りゲーム」となるのでしょうか?

まだまだ、コロちゃんにはわからないことがたくさんあります。これからも、いろいろ世の中を見渡して、調べてみたいと思います。

6.中間層の減少と民主主義

現在、世界の国々の中では、「中間層」の減少がいたるところで見られており、アメリカでもヨーロッパでもポピュリズムがまん延しています。

民主主義は、分厚い「中間層」を前提とした制度であるというのが、多くの人が認めることだと思います。

今後、日本でこの「中間層」の減少が、どのような社会現象を引き起こすのか、コロちゃんは大きな不安を持ちます。

ただでさえ、「少子化問題」や「防衛費増額」など、国論を二分する課題が多いのですから。

7.社会の変化を見据えよう

この「中間層の減少」も、多くの方が言われていましたが、このようにデータではっきりと証明されるには時間がかかります。

とくに「見たくない現実」を見る場合は、なかなか認めたくないバイアスがかかります。

それでも、現実は確実に進んでいくのですから、きちんと実態を知ることこそが重要だと思うのです。

コロちゃんは、このなかなか見えてこない現実を、しっかり見据える必要性を痛感しています。

正しい認識がなければ、正しい対策は打てませんからね。

多くの皆さんに、この日本の「中間層の減少」の現実をしっかり見ていただきたいと、コロちゃんは思いました。

コロちゃんは、社会・経済・読書が好きなおじいさんです。

このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に障りましたらご容赦お願いします(^_^.)

おしまい。

Kohei TanakaによるPixabayからの画像
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