【読書考】「日露戦争 起源と開戦」(上)(和田春樹 著 岩波書店)
「日本人は日露戦争を司馬遼太郎の『坂の上の雲』で知った」という言葉があるように、「坂の上の雲」は実に面白くそして痛快な歴史小説でしたが、本書は「和田春樹」の「坂の上の雲」ですね。
しかも、司馬の小説よりもはるかに史実を詳細に知ることができ、且つ面白く、真実に迫るものであると思えました。
本書は、司馬「坂の上」執筆以降に明らかになった膨大な資料も駆使し、詳細に当時の東アジアを再現しています。
私たちは、「日露戦争後」に日本が「韓国併合」から「満州国建国」への大陸政策へと突き進み、昭和20年の「帝国の破綻」を迎えることを知っています。
しかし、本書では「日清戦争」前後の経過や、「日露戦争」へと突き進む過程の「清国」・「韓国」・「ロシア」・「日本」の詳細な外交的動きを描いています。
それを読むと、決してその後の日本の「帝国主義的侵略政策」が「歴史的必然」ではなかったことを指し示しています。
当時それぞれの国家は真剣かつ必死の努力をしたのに、まるで転がるように進んでしまったことがよくわかりました。
また、その詳細な各国外交官の動きを知る中で、「国家の外交」とは、どのようなもので、どのようにして行われるのかをよく知ることができました。
これらの歴史を読む面白さを実感できるという意味でも、司馬「坂の上」をはるかに凌駕すると思えます。
本書を読むと、朝鮮半島は「ロシア」・「清国」・「日本」に囲まれた小国として、各国の力がせめぎ合う係争地とならざるを得ない地なのがよくわかります。
しかし、「韓国」の指導層は、周辺大国別の「派閥」に分かれて政争を繰り広げています。
このような行動は、朝鮮半島の地政学的位置によるものなのか、それとも「韓国」の民族的文化的要因によるものなのか、読みながらいろいろ考えてしまいました。
また、日本が「日清戦争」を勝ち抜く中で影響力を強め、次に大国「ロシア」とせめぎあいを繰り広げる風景を読むと、ほかの選択枝はなかったのかとの思いを持ちます。
そして、物語を読むような興奮する思いも感じました。
それにしても、当時の日本の「韓国」に対する政策の稚拙さです。
王妃であった「閔妃殺害」1985年(明治28年)や、当時の「大院君」をめぐる日本の外交的動きはとても正視に耐えないとしか言い様がありません。
本書(上巻)で描かれている世界は1902年(明治35年)までです。日露戦争は1904年(明治37年)です。
下巻を読むのが実に楽しみです。歴史を知る楽しさを堪能させてくれる本書を高く高く評価したいです。
本書を、ぜひ読むことをおすすめします。絶対面白いですよ。
コロちゃんは、社会・経済・読書が好きなおじいさんです。
このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に触りましたらご容赦お願いします(^_^.)
おしまい。
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