コロちゃんは、池上彰さんの本の大ファンです。とにかく、読みやすくわかりやすい。そして必ずいくつかの知らなかった事実を教えてくれるんです。
本書は、日本銀行のお仕事の紹介です。日本銀行のやっていることをぼんやりとしか分からなくても、本書を読めば、日本銀行のお仕事の全体像がわかります。
1.金融という言葉
みなさん「金融」という言葉の意味をご存知でしたか?
コロちゃんは本書で初めて知りました。「金融とは、お金を融通するから『金融』という」そうです。「お金」と「融通」から一文字ずつとったんですね。
ですから、「金融」とは、世の中の「お金が余っている所」から「お金が必要な所」に融通するお仕事ですね。
こういう知らなかった事がわかる楽しみが池上彰さんの本には必ずいくつかはあるので楽しみなんです。
2.日本銀行のお仕事
日本銀行には三つの役割があるそうです。「銀行の銀行」「政府の銀行」「発券銀行」です。
全国の銀行間のお金のやり取りは全て日本銀行が行います。
政府のお金の出し入れも日本銀行が行います。
お札の発行も日本銀行のお仕事です。
この本は、この様な日本銀行のお仕事の基本的な仕組みを、平易な言葉で書いているんです。
3.日本銀行の目的は景気の回復ではない
日本銀行が目指しているのは、「物価の安定」であって「景気の回復」ではないとあります。
そうなんですよね。アメリカでは「パーティーが盛り上がっている最中に、会場からパンチボールを取り上げる仕事」と例えられています。
政治家は景気が良くするのがお仕事ですから、そこで、日本銀行と政治との間で軋轢が生まれるわけです。
4.「物価の安定」のための手段「金融政策」
日本銀行は、景気をコントロールする為に金利を上下させます。
ところが政治家は、景気が良い方が評価されますから、金利を下げさせたがります。
本書では、その政治家との金利を巡る悪戦苦闘ぶりを、以下の通り紹介しています。
5.激しい批判を浴びる日銀の金利政策
過去の日銀の金利政策については、2章にわたって解説しています。
「ゼロ金利で悪戦苦闘」では、「過去、日銀の金利政策は多く批判を浴びてきました。
金利引き上げが遅れためにバブルを招き、その後はバブル潰しに金利を引き上げすぎてデフレを招いた」と批判されたのです。
それでもバブル後の景気の落ち込みに歯止めはかかりません。日銀は1999年に、ついに「ゼロ金利政策」を採用しました。
それでも大勢に影響なく、景気対策には全く役に立ちませんでした。
その後はマイナス金利や量的緩和など、いろいろ施策を打ち出しますが、効果はあまり得られなかったという経過が紹介されています。
なかなかデフレから脱却できない日本経済。「もっと大胆な金融緩和を」という政治からの圧力が高まります。
アベノミクスの登場です。黒田日銀総裁の誕生と共に「黒田バズーカ」が放たれます。
しかし、短期戦のはずがいつになっても目指した成果が得られず、今となってはいろいろな副作用が積み上がってきました。
本書は、今後の「出口はどうするのか」と疑問を書いてこの章を締めています。
このような経済問題は、政治が密接に絡んで進行してきた結果、著者のスタンスによって評価が全く変わります。
擁護する本と、批判する本それぞれありますが、本書はニュートラルだと感じました。
6.日本銀行と政治家との関係
本書を読んでのコロちゃんの感想ですが、日本銀行と政治家との関係が、ここ30年以上も緊張した関係となっていると思いました。
政治家は景気を回復させる為に何としても金利を下げさせたい。
日本銀行は、専門家としてそれを掣肘されたくない。そもそも金利を下げても景気が上向くとは限らない。
本来ならば、協力・協調すべき政府機関同士のはずなのですが、ギクシャクは未だに続いていますね。
7.そもそも日本経済の低迷の原因は何なんだろう
ここも本書を読んでのコロちゃんの感想です。
コロちゃんは、90年代の小渕総理の時代に、100兆円規模の財政投入の景気対策を何度もしたのにダメだったことを覚えています。
小淵総理は記者会見で「世界一の借金王です」と答えてたんですよね。
2000年代の小泉総理は「自民党をぶっ潰す」と抵抗勢力を廃しての「聖域なき構造改革」を叫んでたけど、やはり経済は上向かなかった。
安倍総理は、ご存じのアベノミクスで「異次元の金融緩和」を主張しました。それらを、当時のマスコミも世の中も支持したんだけど、やっぱり経済は上向きませんでした。
本書の日本銀行と政治家のゼロ金利を巡る軋轢を読んでると、経済低迷は日本銀行の金融政策が原因とする政治家と、そうではないとする日本銀行の攻防の様にも思えます。
黒田日銀の異次元緩和の歴史的実験の結果から、軍配は日本銀行に上がった様にコロちゃんには思えましたけど、果たしてそれはどういう意味を持つのかと考えてしまいました。
8.本書は「金融入門書」として優れています
本書は、2009年発行の「日銀を知れば経済がわかる(平凡社)」の改訂新版(2017年発行)です。
コロちゃんは、前者を2013年に読んで、以下の感想を記録していました。
「著者は、テレビでも大活躍だが、とにかく専門的な物事をわかりやすく紹介することがうまい。『日銀』や『経済』などのシステムや動きは、極めて難解なのだが、実にわかりやすく解説してくれている」
「時代の変化と共に既に1994年に『公定歩合』はなくなっていることなど、一般の人々はどれだけ知っているだろうか」
「『入門』との表題がついた経済書は数多いが、大体は、とても入門どころではない難解なものが多い中で、本書は『中学生でもわかる』ような読みやすさだと思う。『日銀』や『経済』についてもっと知りたくなる本である」
この改訂新版も、当時と全く同じ評価をあげたいと思いました。本書を、ぜひ読むことをおすすめします。興味深いですよ。
コロちゃんは、社会・経済・読書が好きなおじいさんです。
このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に触りましたらご容赦お願いします(^_^.)
おしまい。
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