コロちゃんには、母親(おばあちゃん)がいました。もう亡くなってから10年たつのですが、この母親の口癖が「心配で仕方がない」だったのです。
コロちゃんと姉は、「心配事を探しだして心配しているよ」「心配事がないのが心配なのみたい」と、よく冗談にして話題としていました。
コロちゃんは、その母親の血をひいていますから、最近の世の中を見渡していると、思わず「心配で仕方がない」と思ってしまうのです。
1.日本の存亡がかかるようなテーマ三つ
朝、新聞を読んでいますと、現在の日本には、日本の存亡かかかるような大きなテーマが、少なくとも三つはあるとコロちゃんは思っています。
しかも、そのどれもが、世論を大きく二つに割るテーマなのです。
①少子化対策
下記の表が、家族関係支出の国際比較のグラフです。日本は、欧米と比較すると明らかに低いです。
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/15/backdata/01-01-04-008.html
出典:厚生労働省 平成27年版厚生労働白書-人口減少を考えるー> 図表1-4-8 家族関係社会支出の対GDP比の比較より(2月20日利用)
岸田総理が、 この予算を2倍に増やそうとしているわけですが、政府内部で混乱しているようですね。
2020年度の「家族関係社会支出」は10兆7536億円(GDP比2.01%)です。
これを岸田総理がおっしゃるように、倍増するというと新たに約11兆円が必要となります。 その財源をどうするのかが、まだ明らかにされていません。
各社の世論調査を見ると、子ども予算の倍増には、賛成が60%台、反対が30%台で、その負担を増税でまかなう問いには、賛成・反対ともに40%台と割れている調査が出ていますね。
賛否が拮抗しているのです。
現在のところ、岸田総理の発言は「必要な政策を整理したうえで、予算倍増に向けた大枠を6月に示す」となっていますので、コロちゃんは、それを興味を持って待っています。
②防衛費
2022年度(令和4年度)の防衛関係予算は、5兆4005億円です。下記の表を見てもわかるように、これまで毎年増加はしていたのですが、それを一気に増やすことが決まっています。
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20221028/04.pdf
出典:財務省 防衛 2022年10⽉28⽇より(3月7日利用)
現在は、上記の令和4年の5.4兆円の防衛費を、2027年度に国内総生産(GDP)比2%にすると報道されています。
GDP比2%に相当する防衛費は年約11兆円に上ります。
ここで、コロちゃんの頭に浮かぶのは「防衛費倍増」の予算措置です。どこから増えた予算を工面するのでしょうか。
1月23日に国会に提出された2023年度予算案には、防衛費増へ必要となる財源として、以下を上げていました。
①歳出改革(1兆円強)
②決算剰余金(7000億円程度)
③税外収入(9000億円程度)
④増税(1兆円強)
これを見ると、④の増税以外は一時的な予算の横滑りで、安定財源ではないんですよね。
しかも、その増税の中身の検討は先送りされています。
この「防衛費増額」の各社の世論調査も、賛成・反対ともに40%程度となっています。
「防衛増税」となると、賛成は20%台で反対が60%台です。
この案件も、賛否が拮抗しているのです。
③社会保障関係費
「社会保障関係費」とは、国の予算に占める、医療・年金・介護・生活保護などの、社会保障の経費のことです。
下記の表をご覧ください。棒グラフのブドウ色が「社会保障関係費」です。
https://www.mhlw.go.jp/content/12600000/000986415.pdf
出典:厚生労働省 令和4年度予算 国の一般歳出における社会保障関係費より(3月7日利用)
上記の表を見てもわかるように「社会保障関係費」は、国の予算のうちでも最大の金額となります。一般歳出の54%を占めます。
しかも、高齢化を背景として、年々増加しているんです。
日本の社会保障は、欧米と比較すると「高齢者」に偏っていますから、「少子化対策」の上積みを進めるとなると、いよいよその財源が問題となってきます。
下記の表が「社会保障に関する国民意識等」の調査結果です。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001r86x-att/2r9852000001r8l8.pdf
出典:厚生労働省 社会保障に関する国民意識等より(3月7日利用)
「若い世代」では「高齢者の負担増はやむを得ない」の割合が高く、「高齢者層」では「現役世代が負担すべき」の割合が高いです。
予想通りの調査結果ですね。
このように「社会保障」も、国民の意識は、年代別で割れているのです。
2.「不安な日本」と「調整に腐心する日本」
①不安な日本
コロちゃんが、世の中をみていますと、高度成長の1970年代と現在とでは全く比較にはならないのですが、現在の方が、世の中に「不安心理」が充満しているように思えます。
高齢者はもちろんのこと、若い方も多くの「不安」と「ストレス」を感じているのが実情なのではないでしょうか。
下記の表は、内閣府の調査したものですが、年々じわじわと「不安が」拡大してきています。
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/06/dl/1-2-1a.pdf
出典:厚生労働省 第2章 社会保障の各分野の変遷より(3月7日利用)
下記の表は、同じ調査の中にあるものですが、「良い方向に向かっている分野」での「経済力」はダダ下がりです。
この調査は、2005年までのものですが、現在はより進行しているのではないでしょうか。
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/06/dl/1-2-1a.pdf
出典:厚生労働省 第2章 社会保障の各分野の変遷より(3月7日利用)
②調整に腐心する日本
上記のよう社会な「不安」に対して、一見何も対策をしない、あるいは対策は提案されていても、ちっとも進まないことが、社会や企業のあちこちで見られています。
なぜ、変革や対策が進まないのかを、多くの方たちがさまざまな考察をしています。
コロちゃんも、いろいろ考えてブログで書いたこともあるのです。
そのブログに興味がある方は、下記のリンクをクリックお願いします。
下記のブログでは、日本が変わらない理由を「経路依存性」と「ノルム(規範」の観点から考察しています。
しかし、前項のような「国論を二分」するような分岐に日本が今立っているとすると、どちらを選んでも「社会の不安定化」が進行し、「社会不安」が増していきます。
そうすると現状は「調整に腐心している」とも考えられるのではないかと思いなおしました。
「問題の先送り」「現状を変更しない」「チャレンジしない」は、すべて「不安定化」を避けるための調整を進めているためだという捉え方です。
3.イギリスで起こったこと
昨年2022年10月に、イギリスのリズ・トラス首相が辞任を表明しました。首相就任から44日での辞意表明は、イギリスの政治史上最短だそうです。
なぜ、こんなことになったのでしょうか。
トラス首相は、昨年9月に首相に就任しました。
そして最初の打ち出したのが、約450億ポンド(約7兆円)の大型減税案です。
所得税の最高税額の引き下げ、法人税率の引き上げ凍結などが盛り込まれたものだったそうです。
その結果、「これほどの大規模の減税の財源確保は大丈夫か」となり、市場では通貨、株式、国債が同時に売られるトリプル安が起こりました。
英国では、「ライアビリティ・ドリブン・インベストメント」(LDI)と呼ばれる資金運用を行う年金基金が増えてきていました。
その年金基金は、英国債の急落による担保価値の急落によって、追加の担保支払い要請(マージンコール)に直面したのです。
その結果、資金捻出のために保有する国債の売却に追い込まれた「英年金基金」は、全体で25兆円の損失が発生したと報道されています。
イギリスでは、「財源の裏付けのない減税政策」を発表しただけで、予想外の英国の年金基金への大きな打撃を受けてしまったのです。
「持続可能ではない政策」が社会・経済に与えるマイナスの影響は、決して無視できるものではありません。
今回のイギリスの金融市場の混乱は、大きな国民負担を生み出しました。
これでは、トラス首相も即時辞任せざるを得ませんでした。
これは、経済・社会のひずみを軽視したために起きた「強制リセット」です。
日本では、このような「強制リセット」は起こらないのでしょうか。
4.「外的ショック」が起こる時
ここまで、「変わらない日本変えられない日本」の姿を見てきました。しかし、いつまでも先送りはできるものではありません。
イギリスでは、市場が混乱して、政治・経済において、強引に「リセット」が進められました。
では、日本ではどのようなことが起こるのでしょうか。
まず、日本は「経常黒字国」です。日本の国債は、そのほとんどが日銀と国内勢で購入されています。
今回のイギリスで起きたことは、「経常赤字国」のイギリスから資本が逃避したことによって起きてますから、同じことは日本では、起こりにくいと思います。
しかし、日本には1200兆円をこえる借金もありますし、日銀の「異次元緩和」のひずみも蓄積しています。
大きな「外的ショック」が起きた時に、経済や社会がどのような影響を受けるのか「不安」が高まっていると思うのです。
「ブラック・スワン理論」というものがあるそうです。下記の引用をご覧ください。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%AF%E3%83%B3%E7%90%86%E8%AB%96
ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典:「ブラックスワン理論」最終更新 2022年12月12日 (月) 00:28
「そんなことは、起こるはずがない」と思われたことが、起こった時に強い衝撃を受けるということらしいですが、コロちゃんは、日本に「ブラックスワン」が飛来しないことを願っています。
コロちゃんが、現在想像している「ブラックスワン」には以下のようなものがあります。
・台湾海峡危機
米中で戦闘行為が勃発したならば、日本はどうするのでしょうか。
「周辺事態法」というのがあります。その内容は下記のとおりです。
「日本が直接武力攻撃を受けるおそれのある事態が生じた際に、日本の平和と安全の確保を目的として、米軍その他の外国の軍隊を支援することができる」
はたして、日本は戦うのでしょうか。
・首都直下地震
「30年以内に70%」でマグニチュード7クラスの地震が起きると発表されています。
予想される死者数は1.1万人。大きな被害が出ます。
・東南海地震
太平洋の南海トラフで100~200年周期で起きると考えられています。前回は1944年に起きています。(昭和東南海地震)
中央防災会議は平成15年に東海・東南海・南海の3地震が同時発生した場合の被害想定を発表しています。
死者想定は最悪で約28000人です。
2011年に起きた「東日本大震災」の死者数が2万2312名と言われていますから、それを上回る死者数が想定されているわけです。
これらの危機は、かならず起こると決まったわけではありません。
しかし、もし起きた場合には、この「外的ショック」から、連鎖して経済・社会に大きな衝撃が増幅して起こる可能性が大きいと、コロちゃんは思っています。
5.「不安定化のリスク」と「外的ショックのリスク」
思い切った変革には、社会に「不安定化のリスク」が発生します。日本は、それを異様に嫌う文化なのかもしれません。
しかし、今後はだんだん「外的ショックのリスク」が、増大していくと思います。
少なくとも、米中摩擦は、昨年後半から急激に進行しました。
昨年の前半までは、コロちゃんは、米中戦争なんて起こるはずがないと考えていたのです。
懸念を強めたのは昨年後半に入ってからです。
今後は、経済の面でも「外的ショック」のリスクは高まっていくと思います。
時間の経過とともに「外的ショック」のリスクがだんだん高まる現状を見ると、もう「不安定化のリスク」を避け続ける余裕はないのではないのかと、コロちゃんは思っています。
6.「和を持って貴しとなす」は美しいけど・・
「外的ショック」が起きた時には、ひずみが大きいところから「クラッシュ」が始まります。
それは、経済・社会に大きな影響をもたらすでしょう。今回のイギリスを他山の石とすべきと考えます。
「和を以て貴しとなす」という言葉が、日本社会を表す言葉としてよく取り上げられます。
語源は「論語」や「604年に制定された聖徳太子の17条憲法」のようですが、社会の変化に対応しない言い訳に使われてしまっています。
現在の日本の変革には、どのような判断を行っても、国民の半分近くの反対が起きることは明らかです。
もう、それを押し切ってでも、物事を進めなければならない時が来ていると思います。
コロちゃんは、社会・経済・読書が好きなおじいさんです。
このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に障りましたらご容赦お願いします(^_^.)
おしまい
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