【経済考】「物価高とその背景」経済財政白書2023①

経済

おはようございます。昨夜は雨が降ったようで、家の前にある小さな花壇の土も真っ黒に濡れていましたね。

今朝のワンコとの散歩は涼しくて心地よい気温でした。ワンコも気持ちよさそうにポコポコ歩いてましたよ。コロちゃんも、当然気持ちよく歩いてきました。

今日は、先日内閣府から発表された「2023年度年次経済財政報告(経済財政白書)」について、ポチポチします。

1.「経済財政白書」

政府は、先月の8月30日に「令和5年度(2023年度)年次経済財政報告」を発表しています。

この「報告」は、「経済・財政」の1年間の動きを分析し、問題点や展望、政策の方向などについてまとめたもので、通称を「経済財政白書」といいます。

今回のこの「経済財政白書」は、表紙の副題に「動き始めた物価と賃金」と書き込んでいます。

この「白書」は、全部で500ページを超える分量がありますので、全部をキチンと読み込むことは、コロちゃんには到底できませんので、興味のある個所だけをポチポチします。

なお、この「令和5年度年次経済財政報告」をお読みになってみたい方は、下記のリンクのクリックをお願いします。

令和5年度 年次経済財政報告 - 内閣府
内閣府の政策(経済財政)、白書・年次報告...

2.「日本経済はデフレ脱却の正念場」

まず、白書の冒頭に、後藤茂之経済財政担当大臣の「ご挨拶」があります

これはお決まりのパターンんなのでしょうけど、この「白書」で言いたいことのエッセンスが込められています。

最初の言葉は「日本経済はデフレ脱却の正念場」で始まっています。

日本経済が「デフレ」と初めて認定したのが2001年です。今から22年前ですね。

その時以来「日本経済」は、「物価上昇率がゼロ近傍で推移する中で、企業ではコストをカットして価格を据え置くという行動が広が」ったというのです。

そして「そのため、売上げが増加せず、人件費や投資が伸び悩み、経済成長が抑制されて消費者は購買力を失うという悪循環」に陥ったと言います。

それが、「コロナ、ウクライナ危機による世界的な物価高騰を契機に・・・企業の価格転嫁が進み始め、40年ぶりの物価上昇となり」としています。

そして「物価上昇の下、今年の春闘では、30年ぶりとなる高い水準の賃上げが実現し、我が国の物価や賃金は大きく動き始めてい」るというのです。

その結果として「『賃金と物価の好循環』が広がっていくことが求められてい」ると結んでいるのです。

はてさて、既に30年以上にわたって成長ができていない「日本経済」が、この「デフレ脱却」を契機に浮上できるようになるのでしょうか。

コロちゃんは、無理なんじゃないかなー、と考えています。

だって「賃上げ」が大幅に行なわれたのは、大手企業と一部の中小企業だけだろうと思いますし、「非正規雇用」と「高齢者の雇用者」には、恩恵はあまり届いていないと思うからです。

まあとりあえず、そのコロちゃんの感想は置いておいて「経済財政白書」の内容を見てみましょう。

3.第1章「マクロ経済の動向と課題」

第1章の「マクロ経済の動向と課題」をみると、「日本経済が緩やかな回復」をしているとしています。

①「GDP」

下記のグラフをご覧ください。

「内閣府 年次経済財政報告」より

https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je23/pdf/p01000.pdf
出典:内閣府 年次経済財政報告 令和5年度-動き始めた物価と賃金- マクロ経済の動向と課題 より(9月5日利用)

上記のグラフの青線が「名目GDP」です。2022年の半ばから上向いていることが確認できます。そして2023年7-9月期に591兆円と過去最大となっています。

しかし、物価上昇を加味した「実質GDP」では緩やかな上昇となっていますが、それでも過去最大となっています。

次に、そのGDPの寄与度を見てみましょう。下記のグラフをご覧ください。

「内閣府 年次経済財政報告」より

https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je23/pdf/p01000.pdf
出典:内閣府 年次経済財政報告 令和5年度-動き始めた物価と賃金- マクロ経済の動向と課題 より(9月5日利用)

「GDPデフレーター」とは、GDP算出時に物価変動の影響を取り除くために用いられるものです。「名目GDP」を「実質GDP」で割ることによって算出されます。

「白書」では、「消費や設備投資デフレーターの上昇により下押しされたものの、緩やかな回復を続け、過去最大となっている」としています。

しかし、コロちゃんの目には、ゼロから上の部分が、4半期ごとに右肩下がりに縮小してきているように見えますけれど、理解が浅いんでしょうか。

②「個人消費」と「総雇用者所得」

次に「総雇用者所得」と「個人消費」を見てみましょう。下記のグラフをご覧ください。

「内閣府 年次経済財政報告」より

https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je23/pdf/p01000.pdf
出典:内閣府 年次経済財政報告 令和5年度-動き始めた物価と賃金- マクロ経済の動向と課題 より(9月5日利用)

上記のグラフを、「白書」では「基調として個人消費は持ち直している」と書き込んでいますが、「個人消費」は青線ですよね。

コロちゃんの目には、青線は横ばいというかせいぜい緩やかに上昇しているとしか見えません。

また、「実質総雇用者所得(赤線)」について「白書」は、「持ち直しの動きがみられる」としていますが、これはどうみても右肩下がりでしょう。

「持ち直し」と読んでから、改めて見直すと、そういえばちょっと赤線の最後の方が少し上向きかな、といえる程度ですね。

コロちゃんは、これを読んでポジティブに解釈しすぎだろうと思いました。

③消費支出

次に、「収入階層別にみた消費支出」を見てみましょう。

下記のグラフをご覧ください。

「内閣府 年次経済財政報告」より

https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je23/pdf/p01000.pdf
出典:内閣府 年次経済財政報告 令和5年度-動き始めた物価と賃金- マクロ経済の動向と課題 より(9月5日利用)

上記のグラフの実線(実質)を見ると、青線(低収入世帯)が、消費を抑制していることが見て取れます。

緑線(高収入世帯)は、プラスで横ばいですが、増えてはいないですね。

「白書」でも「実質消費支出全体について、2021年度から2022年度の変化をみると、低収入世帯では低下、高収入世帯ではほぼ横ばいで推移」と書いています。

やはり、物価上昇に対して、「消費支出」は「高収入世帯」でも横ばいで、「低収入世帯」では明らかなマイナスとなっています。

そして「勤労者世帯全体」でもマイナス圏ですから、今後も「消費の拡大」は難しいのではないでしょうか。

「経済の好循環」に赤信号が点滅しているように、コロちゃんは思いました。

④内部資金

コロちゃんがこの「白書」をポチポチ見ていたら、、「企業の設備投資動向」のグラフを見つけました。

下記のグラフをご覧ください。

「内閣府 年次経済財政報告」より

https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je23/pdf/p01000.pdf
出典:内閣府 年次経済財政報告 令和5年度-動き始めた物価と賃金- マクロ経済の動向と課題 より(9月5日利用)

上記のグラフの「内部資金」という赤斜線の棒にご注目ください。

「内部資金」とは「内部留保金+減価償却費」のことを言うようですが、「日本企業」は相変わらずしっかりとため込んでいるようです。

コロちゃんは、過去の自民党副総裁の麻生太郎氏の発言を思い起こしました。

麻生太郎自民党副総裁は、2015年1月5日「生命保険協会新年賀詞交換会」で下記のように言っていたんです。

「守銭奴みたいなものだ」(By 麻生太郎)
(企業が稼いだ利益を内部にため込むことを優先する姿勢を指摘して)

ここまで言われても、日本の企業は2015年以降も、相変わらず「内部留保金」をため続けているんですから、もう法規制しないとダメだと、コロちゃんは考えますね。

お金をため込んで使わない企業には、必ず賃上げで使うように法規制すればよいと思っています。

⑤「物価」

次は、コロちゃんのような「清貧生活」をおくっている方たち全員が一番気になる「物価」の動きです。

下記のグラフをご覧ください。

「内閣府 年次経済財政報告」より

https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je23/pdf/p01000.pdf
出典:内閣府 年次経済財政報告 令和5年度-動き始めた物価と賃金- マクロ経済の動向と課題 より(9月5日利用)

上記のグラフは、数多くの商品の物価をいちいち書き込んだグラフです。

コロちゃんは、「世界インフレの謎」(著 渡辺勉東大教授 2022年)を読んだので、このチャート図が「渡辺チャート」と呼ばれていることを知っていました。

下記の本です。興味深い本ですよ。皆さんも是非お読みになってください。

この渡辺先生の本には、確か2~3000品目の商品の物価上昇率をチャート図に書き込むと、日本ではその50%以上の品目が0付近に集中しているとの内容でした。

それが、欧米での同じチャートを作ると、マイナスからプラスまで広く広がっていて、日本はそれとは全く違っているそうなのです。

「日本」と「欧米」とは、そのような違いがあるそうです。国民文化の差なのでしょうか。

上記の「物価上昇品目」の「チャート図」について、「白書」では「2023年6月時点で、ゼロ近傍の山の高さが低く、インフレ方向へとなだらかな勾配を描いている」としています。

そして小見出しには「物価は動き始めている」としているのです。

しかし、その後の「消費者物価の動向」の結論としては、下記のようにまとめています。

「物価を取り巻くマクロ環境をみると、現時点では、『物価が持続的に下落する状況を 脱し、再びそうした状況に戻る見込みはない』 という状況には至っていないものと考えられる」

まだまだ、金融緩和の手を緩めるわけにはいかないと言っているのですね。

なお、コロちゃんが読んだ「世界インフレの謎」は、このブログで感想を【読書考】として投稿しています。

その【読書考】「世界インフレの謎を読んで」を、お読みになりたい方は、下記のリンクのクリックをお願いします。

【読書考】「世界インフレの謎」(渡辺努 著 講談社現代新書)を読んで

⑥「コロナ・物価高」に141兆円

次に「借金」のお話です。

下記のグラフをご覧ください。

「内閣府 年次経済財政報告」より

https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je23/pdf/p01000.pdf
出典:内閣府 年次経済財政報告 令和5年度-動き始めた物価と賃金- マクロ経済の動向と課題 より(9月5日利用)

上記の「一般会計歳出」にご注目ください。この「白書」では、以下の様に書いています。

「3年間の補正予算においては、128兆円の国債発行を伴って141兆円を措置するという前例のない規模の補正予算によって、国民生活や雇用・事業を守り、我が国経済を下支えしてきた」

まあ、確かにいろいろなところにバラマキしましたから、「我が国経済を下支えしてきた」ことには間違いはありませんね。

しかしコロちゃんは、ちょっと以前に「コロナ対策」にいくら使ったのかを調べてみても、よくわからなかったのですよね。

これでやっとわかりました。補正予算が「コロナ・物価高」対策としてまとめて予算を組んでいたのですね。

これでは「コロナ対策」単体の総額は分かりませんね。

しかし、このような現役世代の被害に使った借金を、現役世代で返済しなくともよいのでしょうか。

「白書」には、そのようなお話が出てきていませんね。やはり請求書は後の世代にまわすつもりなのでしょう。

 

⑦まとめ 「デフレ脱却」

この第1章のテーマは、「マクロ経済の動向と課題」です。

「白書」第1章の全部に渡って「デフレ脱却」が語られています。そのためには国民が「物価上昇」に耐えるように呼びかけているようにも思えました。

この「白書」では、「過去四半世紀の我が国経済にとっての最も大きなチャレンジがデフレ脱却である。」としています。

そして、「マクロ経済環境をみると依然としてデフレ脱却したとは言えない状況にあるものの、今まさに、我が国の物価や賃金が動き出しつつある。」との現状認識を書き込んでいます。

また、「物価高騰が家計や企業にとって一定の負担となっていることは事実である。」と家計の負担増は分かっているよと書いています。

さらに「しかし、こうした物価上昇を契機として、消費者の物価上昇予想が高まり、ゼロに張り付いてきた価格が動き始めることで、デフレ脱却に向けたチャンスが訪れていることを見逃してはならい。」と締めているのです。

この結論を読むと、「デフレ脱却」という「大義」の下には、少々の「物価上昇」くらいは我慢しろと読めるように思えました。

「白書」では上記のように「物価高騰が家計や企業にとって一定の負担」と書いていますけれど、この物価高騰が今後も長く続けば「一定の負担」では到底治まりません。

コロちゃんのような「清貧年金生活」をおくっている「高齢者」には、だんだんと大きなダメージが積み重ねられてきています。

せめて、この「物価上昇」にいつまで耐えれば良いのかを念頭に「白書」を読んでみましたが、そのような記載は見当たりませんでした。

4.「マクロ経済」は分からなくとも「物価高」はわかるよ

上記のように、この「白書」は、ひたすら「デフレ脱却のため」と論調が統一されているのですが、その肝心の「経済の好循環」がいつになったら、完遂できるのかの見通しは書いてありません。

もしかすると「デフレ脱却」は「絵に描いた餅」で、永遠に達成できない目標なのかもしれないのです。

確か「日銀」の黒田総裁が2013年に就任した時に「異次元の金融緩和で2年で物価上昇2%を達成できる」と言っていましたけど、結局は10年たってもできませんでしたよね。

コロちゃんは「デフレ脱却」も、同じ轍を踏むのじゃないかと思っています。

その場合、最後に残るのは「物価高」と「借金」です。

コロちゃんは、今行なわれている政策で、「日本経済」が過去30年に渡って落ち込んでいる「低成長」が「高成長」に変わるとは到底思えないのです。

いずれにしろコロちゃんは、これからの「日本経済」の道筋を見ていることしかできないのですが、とりあえずは足元の「物価高」は何とかしてもらいたいと思いますね。

なにしろ「年金清貧生活」を揺るがすような「物価高」が進行しているのですからね。

上記のように、いろいろポチポチ書いてきましたが、「白書」はまだ第1章が終わっただけです。この「白書」には、あと第2章・第3章と続きます。

第2章は「家計の所得向上と少子化傾向の反転に向けた課題」で、第3章は「企業の収益性向上に向けた課題」となっています。

明日に第2章の紹介をしてみましょうか。第3章は省きましょう。

皆様には、あまり興味のない内容かもしれませんが、「物価高」や」「少子化」はどなたにも密接な関係がありますので、ぜひお読みいただければ幸いです。

コロちゃんは、社会・経済・読書が好きなおじいさんです。

このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に障りましたらご容赦お願いします(^_^.)

おしまい。

NatureFriendによるPixabayからの画像
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