おはようございます。今朝は、朝から爽やかなお天気でしたね。日中は暑くなるのかもしれません。
つい先日は、朝方は、肌寒い気温でしたので、昼間との気温の寒暖差が激しいですね。
コロちゃんは、用心してまだ長袖を1着だけ残していますけど、皆さんもこの様な気候ですので、お身体にはお気をつけください。
今日は、岸田総理の「分厚い中間層を復活させる」との発言と、「日本の中間層」について、ポチポチしたいと思います。
1.岸田総理の「分厚い中間層を復活させる」発言
岸田総理は、先日5月15日の「経済財政諮問会議」で、「分厚い中間層を復活させる」と表明なさいました。
その発言は、5月16日の日経新聞で報じられています。その内容をお読みになりたい方は、下記のリンクのクリックをお願いします。
この記事によると、この経済財政諮問会議で岸田総理は「企業があげた収益を労働者に分配し、分厚い中間層を復活させる」と、ハト派(経済派)らしいご発言をなさっています。
既に皆さんもご存じの通り、かつての日本では「1億総中流」と言われた時代がありました。
下記の引用をご覧ください。
「ウィキペディア 一億総中流 」より
「毎年1回実施している内閣府の「国民生活に関する世論調査」・・・では『中流』と答えた者が1960年代半ばまでに8割を越え、・・・1970年以降は約9割となった」
「すなわち、中流意識は高度経済成長の中で1960年代に国民全体に広がり、1970年代までに国民意識としての「一億総中流」が完成されたと考えられる」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E5%84%い%E7%B7%8F%E4%B8%AD%E6%B5%81#:~:text=%E3%81%99%E3%81%AA%E3%82%8F%E3%81%A1%E3%80%81%E4%B8%AD%E6%B5%81%E6%84%8F%E8%AD%98%E3%81%AF%E9%AB%98%E5%BA%A6,%E5%AE%8C%E6%88%90%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%81%A8%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%80%82
ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典:「一億総中流」最終更新 2022年11月5日 (土) 10:15
上記の引用をみてもわかるように、1970年代には、世論調査で9割の方が「中流」と答えていたのです。
まさに「1億総中流」の時代でした。
今では、情けないことに「一億総中流って、どこの国の話なの?」という言葉が出そうな世の中になってしまいました。
その「分厚い中間層」を、岸田総理が、2020年代の日本で再び生み出そうとご発言なさったのです。
この言葉通り、今後の日本で新たに「中間層」を増やすことができるのでしょうか。
まず、前提として「中間層」とは何か?を調べてみましょう。
2.OECD「中間層基準」
実は「中間層」の定義は一つではありません。過去の研究でも、多くの定義が見られるようです。
ただ最近の研究では、国際機関であるOECD(経済協力開発国機構)が採用している「中間層」の定義を使っている場合が多いようです。
OECDでは、「等価可処分所得の中央値の75%~200%の所得がある人々」を「中間層」として定義しています。
それでは、ここで出てくる「等価可処分所得」とは、どのような「所得」なのでしょうか。
下記の引用をご覧ください。
「総務省 2019年全国家計構造調査 年間収入・資産分布等に関する結果 結果の要約」より
「等価可処分所得:世帯の年間可処分所得(いわゆる手取り収入)を世帯人員で調整したもの」
https://www.stat.go.jp/data/zenkokukakei/2019/pdf/youyaku0831.
出典:総務省 総務省 2019年全国家計構造調査 年間収入・資産分布等に関する結果 結果の要約より(5月14日利用)
上記の引用で見られるように、「等価可処分所得」は、「手取り収入」を「世帯人員で調整」するために、次の計算式を使用します。
「等価可処分所得=総所得÷√世帯人員数」
ですから、例えば世帯年収が300万円で、3人家族でしたら、「等価可処分所得」は、300万円÷√3(1.73)=173万円になります。
√3は(ひとなみにおごれや)でしたね。覚えていらっしゃいますか。
世帯年収が300万円で、2人家族でしたら、「等価可処分所得」は、300万円÷√2(1.14)=263万円になります。
√2は(ひとよひとよにひとみごろ)でしたね。覚えていらっしゃいますか。
私たちは「世帯」単位で生活しますから、「手取り収入」を家族人数によって調整しないと「中間層の生活者」の算出が正確にできないのです。
そして、上記でありましたように、OECD基準では「中間層」を「等価可処分所得の中央値の75%~200%の所得がある人々」と定義しています。
2015年の「国民基礎生活調査」(厚生労働省)の数字を用いると、この年の「等価可処分所得」の中央値は約245万円なので、「中間層」の所得域は「約183~489 万円」となります。
上記の例に当てはめますと、世帯年収が300万円で、3人家族の例では、「等価可処分所得」が173万円ですから「低所得層」になります。
世帯年収が300万円で、2人家族の例では、「等価可処分所得」が263万円ですから「中間層」になります。
世帯年収が同じ300万円でも、世帯人数によって「等価可処分所得」が異なってきますので、「中間層」になったり、「低所得層」になったりするのです。
しかし、この基準の数字ですと、「中間層」の所得域は「約183~489 万円」ですから、一人暮らしで月約15万円の収入でも「中間層」となりますね。
(183万円÷12ヶ月=15.25万円)
この収入では、生活はだいぶ苦しいのではないかと思われますが、現在の基準ではこうなるようです。
皆さん、ぜひご自分の「世帯の収入」を上記の計算式で計算していただいて、どの層に属するのか、お調べください。
ご自分の世帯の、社会での位置がわかりますよ。
3.日本の中間層の推移:国民生活基礎調査(1985-2015)に基づく推計
この中間層の推移を調べたレポートがあります。それは、田中聡一郎先生(関東学院大学経済学部准教授)がお書きになっているレポートです。
この内容をコロちゃんは、以前にブログ記事で取り上げたことがあります。
そのブログをお読みになりたい方は、以下のリンクのクリックをお願いします。
この記事でも取り上げていますが、このレポートは、日本の中間層の規模や推移、そしてその変遷の解析を行なっているのです。
その中の一部を、下記でご紹介します。
①中間層の規模
以下の表をご覧ください。
「日本の中間層の推移:国民生活基礎調査(1985-2015)に基づく推計」より
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2019/191011/201901012A_upload/201901012A0016.pdf
出典:令和元年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業))「高齢期を中心とした生活・就労の実態調査(H30-政策-指定-008)」日本の中間層の推移:国民生活基礎調査(1985-2015)に基づく推計1 より(5月14日利用)
上記で引用した表には、「中間層」の統一した基準はないとしたうえで、5種類の「中間層」の基準の数値を挙げています。
この表で今注目するのは、OECD基準と同じ「等価可処分所得の中央値の75%~200%の所得」の数値です。
上記の表では、1985年、2000年、2015年の数字が出ていますが、その「75~200%」の数値が比較できます。
以下に書き出します。これが日本の「中間層」の推移です。
1985年 64.0%
2000年 58.0%
2015年 57.5%
このレポートによると、日本の「中間層」は、1985年以降、だんだんとやせ細って、2005年に57.5%まで低下しているという結論になっています。
コロちゃんには、2015年以降も「中間層」の減少が続いていているように思われますから、現在ではより細っているのではないかと思いますね。
この現状が、岸田総理が「分厚い中間層の復活させる」とおっしゃられる背景だと思います。
②「中間層の所得域」と日本の貧困化
このレポートには、「中間層の所得域」の推移も載っています。
中間層の基準が「等価可処分所得の中央値の75%~200%の所得」ですから、それが毎年変化すると、年々「中間層」の所得域も変化してしまうのですよね。
下記の引用の表をご覧ください。
「日本の中間層の推移:国民生活基礎調査(1985-2015)に基づく推計」より
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2019/191011/201901012A_upload/201901012A0016.pdf
出典:令和元年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業))「高齢期を中心とした生活・就労の実態調査(H30-政策-指定-008)」日本の中間層の推移:国民生活基礎調査(1985-2015)に基づく推計1 より(5月14日利用)
上記の表をみると、1985~1997年までは、「中間層」の所得の上限・下限は上昇しています。1990年がバブル崩壊ですから、それ以降しばらくは所得の上昇のトレンドが続いたのでしょう。
「中間層」の所得下限のピークは、1997年の194.3万円です。その後2015年には、158.4万円まで所得下限は減少して、その低下幅は35.9万円になります。
1997年~2015年の間は、「中間層」の所得の上限・下限が一貫として低下し続けているのです。おそらくこの後も現在まで「低下」し続けているのではないのでしょうか。
この数字は、今日本が抱えている問題は「中間層の復活」だけではないことを示しています。
これを見て、はっきりしたことは「中間層」が細っているだけではなく、細った「中間層」の所得が下にずり下がっていることです。
「所得層」全体が下に滑り落ちてきているのです。日本全体の「貧困化」が進行していることが、この数字ではっきりわかります。
4.「分厚い中間層」は築けるか
上記で見てきたように、日本の「中間層」は、1990年代末より右肩下がりに細っています。それだけではなく、「中間層」の所得域自体が下にずり下がってきています。
現在の日本の「中間層」の割合は、上記で紹介しました田中聡一郎先生(関東学院大学経済学部准教授)のレポートでは、2015年時で57.5%としています。
この年々やせ細る「中間層」を、再び「分厚い中間層」に増やそうというのが、岸田総理の発言なのですが、その方法として「賃上げ」を訴えておられます。
しかし、今年は3%を超える賃上げがなされたにしても、今後もその賃上げが毎年持続されなければ、「分厚い中間層」の実現はおぼつきません。
それでは、今後も「賃上げ」は持続できるのでしょうか。
その答えを考えるのに、コロちゃんは、少し以前に日経新聞で読んだ「経済教室」の論考を思い出しました。
それは、2月21日の日経新聞に掲載された「賃上げ、どこまで可能か 生産性向上無いと持続せず」との論考です。
この論考をお読みになりたい方は、下記のリンクのクリックをお願いします。
この論考では、「政府・日銀が賃上げを後押しすることは常に正しい政策なのか、また国民や政策当局が強く望みさえすれば賃上げは実現するのか」と問うています。
そして、「ならば今後も、同様の賃上げ実現運動を続ければいいということになる。しかし、話しはそれほど簡単ではない」と続けています。
この後に、政府・日銀が賃上げを促している理由を、専門的に解析しているのですが、その結論部分にコロちゃんは目を止めました。
「企業が賃金コストの上昇分だけ価格を引き上げれば、物価が再上昇して実質賃金を再び引き下げる。いずれにしろ根本的な解決にはならないのである」というのです。
本稿の最後には「持続的な実質賃金の上昇をもたらすのは着実な生産性の向上であることを改めて認識すべきだ」と締めています。
確かに、今年3%以上の賃上げがあったとしても、その後3%以上の物価上昇があれば、実質賃金は下がってしまいます。
そして、コロちゃんのような年金生活者の年金は、物価上昇の後追いの次の年でなければ改定がありません。
しかもその改定も、「マクロ経済スライド」により、物価上昇よりも1%低い数値になります。
この状況の中で「分厚い中間層の復活」が、できるのでしょうか。
岸田総理の「やる気」はわかりましたが、「本気」は見えない思いをコロちゃんは持ちました。今後の岸田総理の言葉と行動を注視したいと思います。
ぜひ「分厚い中間層の復活」を実現してもらいたいですね。
このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に障りましたらご容赦お願いします(^_^.)
おしまい。
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