【経済考】日本が「成長」できない理由はなんだろう?

経済

おはようございます。やっと春が来て、まるで4月のような陽気の日となっていますが、日本経済はちっとも「成長」できていない数字が発表になっています。

どうなってるの? 「成長」できれば、いろんなことが解決できるんだけどなー。

財政も子育ても防衛も、みんなお金がかかるんだから、これじゃあ「成長して分配」できないじゃないの。

1.日本経済「ゼロ成長」

3月9日に内閣府が、2022年の10~12月期のGDP改訂値を発表しました。

内閣府は、多くのデータを基にして、3か月ごとにGDP速報値を発表しているんですよね。

通常1~3月期の発表は、その1か月半後の5月半ばに発表され(第一次速報)、改定値はさらにその1か月後に発表されるんです(第二次速報)。

今回はその「改定値」(第二次速報)が発表されたわけです。

それが下記の表です。

「内閣府 2022年10~12月期四半期別GDP速報 (2次速報値)」

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/gaiyou/pdf/main_1.pdf
出典:内閣府  国民経済計算(GDP統計)より(3月10日利用)

2022年10~12月期四半期別GDP速報は、物価変動の影響を除いた実質で、前期比0.0%、年率換算で0.1%増と、まったく増えていません。

個人消費が、前期比0.5%増から0.3%増に下振れした影響が大きいと報道されていました。物価高の影響ですね。

日本経済は、まったく成長していないのです。

これでは「成長から分配」など「絵に描いた餅」です。

いくら「分配しましょう」と言っても、その原資が生まれてこないのですから、「ない袖は振れない」ですよね。

2.原因は何だろう

こう日本経済が成長できない原因は、おそらく一つではないですね。

ある経済学者は「日本経済が成長しない理由の、8~9割は高齢化で説明できる」と言っていますが、それだけではないと思います。

まず、成長投資と設備投資が減少しています。下記の表をご覧ください。

「2014年版 中小企業白書 」より

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H27/PDF/chusho/03Hakusyo_part1-1_web.pdf
出典:経済産業省 2014年版中小企業白書より(3月10日利用)

リーマンショックが、2008年ですから、それ以降「設備投資」の低迷は続いています。

この表は2014年までですが、全体の傾向と動向はわかると思います。投資が減少すれば成長率は低下するのは、当然の経済法則です。

また、研究開発費もあまり伸びていません。下記の表を見れば、アメリカと中国はぶっちぎりで伸びていますね。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/gijutsu_kakushin/tech_research/shiryou.pdf
出典:経済産業省 我が国の産業技術に関する研究開発活動の動向-主要指標と調査データ-産業技術環境局より(3月10日利用)

また、最近の報道で、「日本企業の1社あたりの研究開発投資」は、過去10年間で25%減少したとも報じられています。

同時にアメリカの研究開発投資は28%増、中国は34%増とも書かれていました。

また、内閣官房の資料によると、2014年まで5年間の、日本の人材投資額はGDPのわずか0.1%で、アメリカ(2.1%)、ドイツ(1.2%)と比べて見劣りすると書かれています。

なぜ、こんなに日本企業が保守的になってしまったのかを、BNPパリバ証券のチーフエコノミストの河野龍太郎氏は以下のように語っています。

「日本経済が危機に繰り返し直面したことで、成長投資に消極的な経営者が結果的に生き残ってしまった影響ではないか」

コロちゃんは、この河野龍太郎氏の著作の「成長の臨海」を読んで、このブログにアップしています。

この【読書考】に興味のある方は、下記のリンクをクリックお願いします。

【読書考】「成長の臨界」を読んで

河野龍太郎氏は、日本経済が成長出来ない理由として、経営者がここ30年間に、バブル崩壊やリーマン危機にさらされる中で、アニマルスピリッツを失ったと語っているのです。

しかし、コロちゃんは、それもあるかも知れないけれど、その視点はあまりにも個人責任の方向に向きすぎていると思いました。 

それよりも、日本社会に需要がもう増えなくなっているという、日本経済の構造的な問題が大きいのではないかと思うのです。

3.需要が伸びない

「GDPギャップ」という言葉があります。

「GDPギャップ」とは、経済の「供給力」と「需要」との乖離の事です。

この数値が、プラスの場合(需要が多い)は、好況でインフレとなります。

マイナスの場合(供給が多い)は、不況でデフレとなります。

下記の表を、ご覧ください。

「内閣府 GDPギャップの推移」

https://www5.cao.go.jp/keizai3/shihyo/2023/0308/1300.pdf
出典:内閣府  経済財政政策 今週の指標 2022年10-12月期GDP第1次速報後のGDPギャップの推計結果についてより(3月10日利用)

この表を見てわかるように、ここ20年の日本経済のほとんどの期間の「GDPギャップ」はマイナスです。

日本経済には「需要」が足りていないのです。

上記の表と同じ発表の中には、2022年10~12月期の「受給ギャップ」はマイナス1.9%だったとも書いてあります。

需要が供給より、「1.9%」低かったというんですね。

繰り返しますが、日本経済は「需要」が足りないのです。

「需要」が伸びて、それを「供給」が追いかけて増えていく循環に進まなければ、経済は成長しません。

4.GDPの6割近くが「個人消費」

下記の表をご覧ください。日本の個人消費はGDPの6割近くに達しています。

「消費者庁」

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2020/white_paper_121.html#zuhyo-1-1-6-1
出典:消費者庁 第1部 第1章 第6節 (1)家計消費、物価の動向より(3月10日利用)

直近の数字では、日本の個人消費は、2022年9月に、GDPの57.1%となっているのです。

日本経済は、この個人消費が伸びないと、需要が大きく増えることない構造になっています。

5.投資をしたがらないのは、需要がないから

これを見ていくと、日本企業が設備投資や研究開発費に多くのお金を回さないのも、何となく理解できます。

需要が増えない市場で、新たな投資をしても、リターンはどのくらい見込めるものでしょうか。

下記の表をご覧ください。大企業の2000年と2020年の「財務の動向」を比較したものです。




https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai3/shiryou1.pdf

出典:内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局 賃金・人的資本に関するデータ集より(11月21日利用)

「経常利益」は、ここ20年の間に91.1%と倍近く増えています。それにもかかわらず「設備投資」と「人件費」は、横ばいなのです。

「内部留保」が175.2%も増えていることには批判も出ていますが、この場合の注目点は「設備投資」です。

利益が上がっていても、企業は「設備投資」を増やしていないのです。

6.日本は「レッドオーシャン」か

お金があるのに「投資」をして、利益を追求しない日本の企業経営者は、アニマルスピリットを失ってしまったのでしょうか。

先にご紹介したBNPパリバ証券のチーフエコノミスト河野龍太郎氏のご意見をもう一度見てみましょう。

「日本経済が危機に繰り返し直面したことで、成長投資に消極的な経営者が結果的に生き残ってしまった影響ではないか」

確かに、日本の大企業の経営者は、ほとんどみんなが内部登用の「高齢者」です。

彼らおじいちゃんたちが、進んでリスクを取らなくなっているというのも正しいのでしょう。

しかし、コロちゃんは、日本経済は成熟して「レッドオーシャン」になっているのではないかと思っています。

「レッド・オーシャン」とは、何か? 下記の「ブルー・オーシャン戦略」をお読みください。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%B3%E6%88%A6%E7%95%A5
ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典:「ブルー・オーシャン戦略」最終更新 2023年1月26日 (木) 05:07

「レッドオーシャン(赤い海)」とは、「血で血を洗うような競争の激しい既存市場」のことです。その激戦区でビジネスをすることは不毛であると言われています。

そして、そこから脱却して、競争のない理想的な未開拓市場である「ブルー・オーシャン(青い海)」を切り開くべきだと説いているのです。

少子高齢化の進んだ「先進国」の日本は、すでに「成熟」した市場であり、すでにこれ以上投資してもリターンの見込めない「レッドオーシャン」になってしまったのだと、コロちゃんは思うのです。

だから、日本の企業経営者は、投資をしようとしないというのが、コロちゃんの見方です。

Jody DavisによるPixabayからの画像

7.「需要」を増やすには「個人消費」が増えなければ

1970年代のように人口が増え続ける時代ならば、「需要」は右肩上がりに増えるのでしょう。

しかし、現在は「少子高齢化」で「人口減少」の時代です。

そして「需要」を増やそうと思えば、GDP の6割を占める「個人消費」を増やすしかありません。

その「個人消費」を増やすには「雇用者総報酬」が増えなければなりません。お金が手元になければ、皆さんがお買い物ができませんからね。

下記の「実質総雇用者所得の推移」をご覧ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/20/backdata/1-4-1.html
出典:厚生労働省 令和3年版 労働経済の分析ー新型コロナ感染症が雇用・労働に及ぼした影響ー  第1-(4)-1図 消費総合指数と実質総雇用者所得の推移より(3月10日利用)

2010年代の「実質総雇用者報酬」は少しずつ増えてきたのですが、何とも頼りないフラフラした上がり方でした。

新型コロナの日本上陸は2020年1月ですから、それ以前の2019年の動きもなんとも「不安定」な上下となっています。

そして、新型コロナが蔓延した2020年以降は、「実質総雇用者報酬」は大きく低下してしまったのです。

「雇用者総所得」が減少すれば、みんなが消費を切り詰めます。

「需要」が減少するのです。

このデータをみて、自信を持って「投資」を進める企業経営者はどれだけいらっしゃるでしょうか。

コロちゃんは「企業経営者」ではありませんが、どう見ても、この日本経済の「需要」が今後にわたって増えそうには見えません。

では、どうしたら「個人消費」を増やして「需要増」とすることができるのでしょうか。

8.「個人消費」を増やすには「雇用者総報酬」を増やせばいい

経済の成長のためには「個人消費」を増やすことは必須です。

「個人消費」を増やさなければ、「需要」が増えないのですから、企業経営者も「設備投資」を増やそうとしないでしょう。

「個人消費」を増やすためには「雇用者総報酬」を増やさなければなりません。

「雇用者総報酬」を増やすには、二つの方法があります。

「雇用者数を増やすこと」と、「一人当たりの賃金を増やすこと」です。

安倍政権時に進行したのが、前者の「雇用者数を増やすこと」でした.「高齢者」と「女性」がどんどん就労していきました。

そして、現在足元では、その「高齢者」と「女性」の就労人口が枯渇しつつあります。

9.高齢就労者の現状

下記の表をご覧ください。「高齢者就業者数」は、2021年までは増えているんです。ただ、伸び率がだんだん縮小してきています。

https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1322.html
出典:総務省統計局 統計トピックスNo.132統計からみた我が国の高齢者ー「敬老の日にちなんでー 2.高齢者の就業より(3月11日利用)

そして、下記の表が、その推移内容の解析です。65歳から69歳の男女においては、既に2019年からマイナスです。

2021年においては、70歳以上の男女が、かろうじてまだ増加しているから、全体がプラス圏に浮いているんです。

https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1322.html
出典:総務省統計局 統計トピックスNo.132統計からみた我が国の高齢者ー「敬老の日にちなんでー 2.高齢者の就業より(3月11日利用)

上記の二つの表を見ても、今後「高齢就労者」が大きく増えることは望めないと思います。

マイナスになるのは今年か来年か、もしかしたら、まだ確定数値が出ていない昨年の2022年にマイナスに落ちているのかもしれません。

10.女性就労者の現状

それでは、アベノミクスの下で、「高齢就労者」と並んで大きく伸びてきた「女性就業者」の現状は、どうなっているのでしょうか。

下記は「労働力人口」の表です。「労働力人口」とは、15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口のことです。

この表の、右側の「女性」の分をご覧ください。

「労働力人口」

https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/index1.pdf
出典:総務省統計局 労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の要約より(3月13日利用)

右側の表の「-女ー」のグラフを見ると、女性の労働力人口は、2020年は「コロナ禍」で減少していますが、その後の2021年と昨年の2022年は、17万人と16万人増加しています。

しかし、左側の表の「ー男ー」のグラフでは、その女性の増加を上回って減少しています。

その結果、男女を合わせたグラフが、以下の表です。

https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/index1.pdf
出典:総務省統計局 労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の要約より(3月13日利用)

男女計の「労働力人口」は、2020年に10万人減少し、2021年には5万人増加したものの、昨年2022年には、再び5万人の減少となりました。

女性の増加以上に、男性が減少しているのです。

それでは、今後は、どのくらいこの「女性就業者」の数字が伸びるのでしょうか。

下記の表をご覧ください。「女性就労率の推移」の表です。

https://www.kantei.go.jp/jp/content/000116409.pdf
出典:内閣府 ⼥性活躍に関する基礎データ 令和4年7⽉19⽇ 内閣府男⼥共同参画局より(3月11日利用)

この表の線のなかの、最後の2021年の就業率の数字をご注目ください。

一番上が「15~64歳の男性」(緑の線)で、一番下が「15~64歳の女性」(橙色の線)です。

この「15~64歳の男女」の就労率の差は、83.9%と71.3%ですから、12.6㌽あります。

今後、「15~64歳の女性」(橙色の線)の就労率がいくら上昇しても、「15~64歳の男性」(緑の線)並みの83.9%までは上がらないでしょう。

この表には、真ん中に「25~44歳の女性」(青の線)の就労率も出ています。78.6%です。

現在の若い女性は、ほとんどみんな働いているのですね。

「15~64歳の女性」(橙色の線)の就労率71.3%が、今後どんなに上がっても、「25~44歳の女性」(青の線)の就労率78.6%まで上がるのはむりなのではないでしょうか。

せいぜい上がったとしても数ポイントにとどまると、コロちゃんは考えています。

このような状況を、総合的に見ていくと、日本ではもう「雇用者数を増やすこと」はできなくなってきていると思います。

11.政府・日銀・経団連は「賃上げ」に希望をつないだ

ここまで書いてきたことを整理します。

ゼロ成長の現実→
投資が減少→
需要が伸びない→
需要の6割は個人消費→
個人消費を伸ばすには所得増が必要→
所得増には雇用者総報酬増が必要→

この状況を考察すると、「雇用者総報酬」を増やすためには、もはや、今までのような「高齢者」と「女性」就労者の増加が望めなくなってきた以上、「一人当たりの賃上げ」を進めるしか道はなくなっているのです。

そこで、政府・日銀・経団連が「賃上げ」の大合唱を始めたのだと、コロちゃんは理解しています。

あとは、その結果がどう出るかですが、あと数か月もすれば判明すると思いますので、コロちゃんも興味津々で注目したいと思います。

いちおう期待はしますが、「日本経済が成長」するような結果を得られるとは、とても思えないというのが、現在のところのコロちゃんの感想です。

コロちゃんは、社会・経済・読書が好きなおじいさんです。

このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に障りましたらご容赦お願いします(^_^.)

おしまい。

👀 Mabel Amber, who will one dayによるPixabayからの画像
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