【読書考】「どうせ社会は変えられないなんてだれがいった?」を読んで

読書

おはようございます。昨日の話しなんですけど、コロちゃんは午後のワンコとの散歩の途中に近所の酒屋さんに寄って「年賀状」を購入してきたんですよ。

早いですねー。もう1年の終わりの月になってしまいましたよ。12月は「師走」と言いますよね。

この「師走」の語源は、平安時代の末期に成立した「色葉字類抄」に「しはす」の注として書かれているそうですよ。

なんでも、かつては冬に坊さんを読んで読経を行なう習慣があったそうで、その坊さんが忙しく走り回ることから「師走」になったとされているそうです。

今では、坊さんはお葬式ぐらいしか呼ぶことはないのに、面白いですよね。

まあそんなわけで、コロちゃんもいよいよ「年賀状を」スリスリする時期が来ました。

コロちゃんはもう「こらいまれ」で、お仕事から引退して10年以上も過ぎていますから、「年賀状」の枚数は年々減る一方ですね。

それでも旧交を温める相手が少数はおりますから、当分は出し続けようと思っていますよ。

今日は久しぶりの【読書考】です、「どうせ社会は変えられないなんてだれが言った?を読んで」をカキコキします。

(この記事は2023年12月10日に投稿されています。本文中の数字はその当時のものですのでご了承お願いします)

0.「今日の記事のポイント」

by<br><span class="bold-blue">コロちゃん</span>
by
コロちゃん

今日の記事は、下記のような内容になっていますよ。どうぞ最後まで楽しみながらお読みください。

☆「どうせ社会が変えられないなんてだれが言った?という書名の読書考です」

☆「ベーシックインカムを否定して、ベーシックサービスを提唱」

☆「自民党の変身と、あなたの中流意識」

☆「怖いのは分断、増税すると格差は縮小する」

☆「井出英作教授の覚悟」

1.「どうせ社会が変えられないなんてだれが言った? 井出英策 小学館」

この本は2021年の発行ですので、下記の記事内容の数字は2021年当時のデータとなっています。

コロちゃんは、この本を発行直後にも読んでいたんです。今回は【読書考】を書くためにもう一度読み返しました(2023年12月現在)。

本書は、「ベーシックサービス」という興味深い政策を提案していたので、記憶に強く残っていました。

著者は「井出英策慶応大学経済学部教授」です。専門は「財政社会学」と「お堅い分野」の先生です。

この先生は、「前原誠司衆議院議員」の「政策ブレーン」だった時期がありました。

現在も「前原誠司議員」は、教育の無償化を訴えていますが、この「井出教授」の「ベーシックサービス」の影響があったのではないかと思われますね。

本書で「井出教授」は、「ベーシックサービス」という興味深い政策を提起しているのですよ。

以下に内容を抜粋してご紹介しますので、気楽にお読みください。

2.「ベーシックインカムを否定」

コロちゃんが、本書を評価して興味深いと思ったのは、その「政策」の「実現可能性」にあります。,

まず、この先生の主張するのは「ベーシックインカム」ではありません。

(下記の本分は2021年発行の「どうせ社会は変えられないなんてだれがいった?」の本のご紹介ですので、数字は当時のものとなります)

①「ベーシックインカム、1人月12万円」

井出教授が主張するのは、「政策」の理念もありますが、コロちゃんが注目したのは、むしろその「政策」の現実性です。

皆さんも「ベーシックインカム」と言う名称は聞いたことがあると思います。

「ベーシックインカム」とは、「すべての人が国から一定額を継続的に受け取れる社会保障制度です。

例えば「1人毎月12万円支給」と言うようにです。

しかし本書では、その「ベーシックインカム」を否定します。その理由を下記に書きます。

②「ベーシックインカムを増税で賄う」

①月に12万円のお金を毎月「全国民」に配ると毎年約180兆円かかります。問題はその財源となります。

②180兆円を「消費税」でまかなおうとすれば、税率をもう64%引き上げる必要があり現実的ではありません。

③企業の「内部留保」に税をかけても、企業の預貯金は200兆円ですから、1年で無くなります。

④「ベーシックインカム」の配布金を「月12万円」から引き下げると、生活できない層が生まれてしまいます。

このように「増税」だけでは、「ベーシックインカム」は出来ないと、本書では論証しています。

コロちゃんは、この「ベーシックインカム」の金額と財源まで詳細に言及している本は初めて見ました。

まず「1人月12万円配布」の金額を考察すると、コロちゃんの「清貧生活」でも毎月11.4万円の生活費がかかっています。

また「生活保護」の平均金額はなかなか計算しにくいのですが(医療扶助・家賃扶助は生活扶助と別項目)、平均受給額は月12万円程度とされています。

そのようなところから、本書の「ベーシックインカム1人月12万円支給」は、「生きるための生活費」としては順当なところなのでしょう。

しかし、その「支給」を実現するための「180兆円の財源」を「消費税」に求めると、64%になるというのです。

「消費税」は1%で2.8兆円になると言われていますから、「2.8兆円×64%=179.2兆円」と言うわけですね。

これだと、現在の「消費税10%」は、もうすでに使い道が決まっていますから、必要な消費税率は「74%」と無茶苦茶な税率になってしまいます。

これは、さすがに全く実現性はないでしょうね。

③「社会保障を無くしてベーシックインカムに充てる」

新たに「消費税」で全国民に月12万円支給する「ベーシックインカム」が不可能ならば、現在行なわれている「社会保障」を全部無くして、その財源に充てることはどうでしょうか。

もちろん「思考実験」ですよ。そんなことできるわけないですものね。

井出教授は、以下の様に記載しています。

①既存の社会保障(年金・医療・介護・社会福祉・公的扶助ほか)を無くして「ベーシックインカム」に統合した場合は、以下の様になります。

②今ある社会保障(年金・医療・介護・社会福祉・公的扶助ほか)は、全部で120兆円ですから、国民全員に年間100万円、月8万円を配ることができます。

③しかし、現在の年金受給者も月8万円に減らされるし、「医療・介護」も3割負担から10割負担になり、「生活保護金額」も月8万円に減らされます。
(現在の生活保護平均支給額は約月12万円)

この案も無理ですね。現在の「年金生活者」の年金を、月8万円に減らす案が社会に受け入れられるはずがありません。

また、高齢者の「医療・介護負担」が10割負担では、「高齢破産者」が激増しますね。

上記のように井出教授は、「日本」において「ベーシックインカム」は難しいと主張するのです。

コロちゃんは「年金生活者」ですから、現在の支給額から月8万円に減らされたら生きていけなくなります。

確かに、このように数字を見ていくと、日本では「ベーシックインカム」は実現不可能と言えると思いますね。

コロちゃんは、この「ベーシックインカム」と聞くと、2007年の「旧民主党(鳩山由紀夫元総理)」の「7万円の最低保障年金」のことが思い浮かびます。

当時の旧民主党は、政権奪取後も結局はこの「最低補償年金」を実現できなかったのですが、今から思うと「月7万円では生活できない」ですね。

このような国民の生活に直結し、そして長期にわたる社会制度の変更をするには、「理念」ももちろんですが、慎重で実現可能な「制度設計」が必要だと、コロちゃんは当時感じましたね。

ただその2007年当時、コロちゃんはまだ50歳前でしたから、あまり「年金制度」への理解も関心もありませんでした。

今でも同じかと思いますが、「年金問題」に関心が高いのは、もう受給を受けている「高齢者」と、その直前の「高齢者予備軍」に限られていると思うのです。

その方たちも関心を持てるような、訴求力がないと「ベーシックインカム」や「ベーシックサービス」の制度改革は難しいと思いますよ。

3.「ベーシックサービス」を提唱

そこで井出教授が主張するのは「ベーシックサービス」です。それは「ベーシックインカム」と、どこが違うのでしょうか。

井出教授は、「お金」と「サービス」は決定的に違う部分があるといいます。

「お金」はみんなが欲しがりますが、「サービス」は必要な人以外にはいらないというのです。「幼稚園」がタダになっても、「大学」がタダになっても、高齢者や大学を卒業した人は使いません。

「サービス」は必要な人以外は使わないものですから、安上がりだと、井出教授は主張するのです。

まあ、確かにコロちゃんが今から「幼稚園」には通わないと思いますね。

①「1人10万円から見えてきたこと」

井出教授は、2020年の「新型コロナ特別給付金」の一人10万円の給付から、次の主張をしています。

皆さん憶えていますか? あの時にはコロちゃんちでは、まだ妻が生きていましたから2人分の「20万円」がいただけたのです。

もっとも、全額「貯金」にまわしましたけど。

それと余談ですが、今年の6月に行なわれた「岸田元総理」によって行われた「全国民対象の4万円減税」ですが、今までの経験からその内で消費にまわるのは20~30%にとどまるそうですね。

それ以外は、全て「貯蓄」にまわるとみているそうですよ。ですから、消費を拡大する効果はあまり高くはないそうです。

話を戻しますと、2020年の「安倍政権時」に行なわれた「コロナ対策の全国民に1人10万円給付」には、総額で「13兆円」の予算がかかっています。

この「13兆円」の使い道を、井出教授が「思考実験」として出したプランは以下の通りです。

➀「大学・介護・障がい者福祉をすべてタダ」
➁「医療費の自己負担を今の半額に下げる」
➂「住宅手当を新設し、月額2万円を全体の2割の1200万世帯に配る」
➃「失業者に月5万円を配る」

上記の①~④の、全てを実現すると「総予算額が13兆円」となり、「新型コロナ特別給付金1人10万円配布13兆円」と同額になると試算したのです。

ちょっと驚きますよね。あの7割が貯金にまわったとされる「1人10万円」の予算を上記の項目に回したならば、結構いろんなことが出来たんですよね。

この方が、「国家予算の13兆円」の大部分が「貯蓄」に移動するよりは、よっぽど効果が高かったのではないかと思いましたね。

②「ベーシックサービスにはいくら掛かるのか」

井出教授は、現在の社会保障分野の「医療・介護・教育・障がい者福祉」の自己負担分を無料化するのに、必要な負担は「消費税16%分」と試算しています。

その「消費税16%」が実現できれば、「住宅手当の創設」と「失業給付の充実」もできると主張しています。

そして「消費税19%」ならば、毎年度の財政赤字もなくすることができると言うのです。

この「消費税16%」を計算すると、44.8兆円となります。
(消費税16%×2.8兆円=44.8兆円)

そして「消費税19%」でしたら、53.2兆円です。
(消費税16%×2.8兆円=44.8兆円)

もちろん現行の「消費税10%」は、もう使い道が詳細に決まっていますから、無くするわけにはいかないので、上記のプランは「+現行消費税10%」となり、かなり高くなります。

しかし、ホンキで「制度設計」を行なうとなれば、出来ないことはないと思わせてくれる提案だと、コロちゃんは感じましたね。

③「財源はどうする?」

井出教授は、「僕の発想は極めてシンプル」といいます。

「消費税」を軸に、「所得税」と「法人税」を組み合わせるとしています。とりわけ「消費税は外せない」と主張します。

なぜかと言うと「消費税」は1%引き上げると約2.8兆円の税収が見込めると言います。

でも「富裕層」の税収を1%上げても1400億円程度、法人税率を1%上げても5000億円程度の税収しか生まれないというのです。

この「消費税16~19%」を他の税に置き換えた場合は、「所得税ならば120~180%」、「法人税ならば34~54%」の引き上げが必要となり、到底現実的ではないと主張しています。

このように、本書で井出教授の主張を読むと、閉塞した日本の現状からひょっとしたら抜け出すことができる政策なのではないかと、コロちゃんは感じましたよね。

コロちゃんは、自分の子どもたちの大学進学の頃に、世間で良く言われた言葉がありました。

それは「100万円の壁」です。

大学進学時には、その家庭に少なくとも「100万円がないと難しい」と言うものでした。

「大学受験」には数万円の受験料がかかります。そして当落を考えると、受験校は数校、学部も複数受けるとなると、数十万円になることが多いのです。

そして晴れて合格した暁には「入学金・学費」が100万円近く必要となります。

それがなかなか準備出来ない家庭が多いというものでした。

もし、大学進学の学費が国庫負担で賄えるならば、その悩みは減少しますね。世の中はますます必要な資格やスキルが多くなってきています。

そのスキルを身に着ける費用は、日本ではほとんど「家族負担」となっています。この「負担」がいささかでも軽くなれば、ちょっとは良い世の中になるのではないかと、コロちゃんは考えますよ。

コロちゃんも、子どもたちの学費には苦労しましたからね。

4.「自民党ですら変わった」

井出教授は「自民党ですら変わった」と主張しています。

本来「保守政党」としての「自民党」は、過去一貫して「自助努力」を掲げていました。

現在でも「政治スローガン」は「自助・共助・公助」と、「公助」は一番最後です。

本来の「保守政党」とは、あくまでも「自助」を最高の美徳として、「社会保障が充実」することを「経済的糖尿病」と非難していたのです。

「保守政党」は、アメリカの共和党もそうですが「小さな政府」を目指すのです。

それが、2017年に当時の「安倍総理」が、消費税増税分の使い道に「子育て世代への投資を拡充す」ると言ったのです。

井出教授は、この発言を聞いて「衝撃」を受けるほどに驚いたと記載しています。その驚いたという内容は下記の通りです。

「2019年に実施される消費税8%から10%の増税分の使い道として、全家庭の幼稚園・保育園と貧しい家庭の大学授業料金をタダにすると表明した」

井出教授は、その内容は「井出教授が提案していた案」そのものであって、その時に自民党は、その党是である「自助努力」を脱ぎ捨てたと指摘しています。

また井出教授は「あの自民党ですら変わった」「歴史は変わったなあ」と感慨深げに記載していますね。

コロちゃんは、その時点では気が付きませんでしたが、2010年に民主党が「子ども手当」を、野党自民党の反対を押し切って強行採決で進めています。

その後に政権を奪還した2012年の安倍政権が、名前を「児童手当」に変えて継承したことからも、自民党の変身を感じましたね。

普通だったら、ライバル政党が作った制度などは元にもどしますよね。しかし、この政権を奪還した安倍自民党はそうしなかったのです。

自民党は右から左までの多彩な主張を抱える「国民政党」です。

先の岸田元総理は、コロちゃんの見るところでは「中道左派」ですね。国民の「自助努力・自助」ではなく、「公助」を重視しています。

「国の負担」で「国民の生活向上」を主張するのは、一般的には「中道左派」と言われます。「税金」を集めて、「格差縮小」を目指して配分するのも「中道左派」の特徴です。

岸田元総理も「少子化対策」の財源として、「医療保険に上乗せして1人¥500円」を集めて、配ろうとしていました。

これも内容は「中道左派」のやり方だと、コロちゃんは考えていますね。

まあ、右派でも左派でもどっちでもいいですから、次の「石破総理」は国民に説得力のあるやり方で政治を進めてもらいたいものですね。

5.「あなたは中流ですか?」

本書の紹介に話を戻しますが、井出教授は現在の「日本の姿」を端的に指摘しています。

内閣府の調査によると、アンケート調査の93%が「自分は中流である」と回答しているそうです。

そして、「世帯年収300万円未満(手取り240万円未満)」の人たちが、いま全体の3割占めているのに、暮らしぶりが「下」だと答える人は、たったの4%しかいないというのです。

これを井出教授は、下記のように言います。

「結婚をあきらめ、子どもをあきらめ、持ち家をあきらめ、飲むものも食べるものもあきらめ、なんとかスマホは持てる。だから自分は中流だと信じたい・・・。そんな人が大勢いる社会になった」

上記で、「世帯年収300万円未満(手取り240万円未満)」の人たちが、いま全体の3割と書きましたが、「世帯年収400万円未満」で見てみると、全体の5割を占めます。

この「3割・5割」と言う数字は「平成元年度(1989年度)」の数字と同じだと言います。

「日本」は平成の30年間で、元の所得水準に戻ってしまったのです。

コロちゃんは、1970年代の高度成長末期に青年時代をすごしてきました。その当時は今と違って持つものは豊かではありませんでした。

当時のコロちゃんは、車やクーラー、結婚や持ち家は、夢として見ていたのですが、いずれは自分も持てるかもしれないという「希望」がある時代でした。

そして、その希望がやがてひとつひとつ実現していく過程が、コロちゃんの時代の「青年像」でしたね。

それに比べると、現在の「青年像」はあまりにも過酷で、知るだけで心が痛みますね。そして、どうして「日本」はこうなってしまったのだろうかと、頭を抱える思いがあります。

コロちゃんは、このブログをお読みの皆さんにも、井出教授と同じ問いを発したいです。

「あなたは中流ですか?」と。

コロちゃんは、若い時から自分の生活は「下流」だと思っていました。だって毎月の給料では生活費に足りなくて、ピーピーいってたんですもの。

それは、家をローンで買った以降も同じでした。

無我夢中でローンを払いながら、子育てを行ない、必要に迫られて車を買い、やっとやっとしのいでいたら、もう子どもたちの進学の学費が待っていました。

いつも足りない中で、やりくりをしていた妻には頭が下がります。

(もっとも、妻の趣味はパチンコでしたから、コロちゃんちの生活ピーピーの原因は、妻の趣味も一因だったのかもしれませんけど)

この様に「下流」を自認するコロちゃんの目から見ても、現在の若者の全てをあきらめた「中流意識」は理解しにくいですね。

もっと周りを見渡して「怒り」を持って欲しいと思います。決して「貧しさ」は変えられないものではないと思いたいのです。

6.「人々の分断が怖い」

井出教授は「お金」を配る「ベーシックインカム」と、サービスを無料化する「ベーシックサービス」の大きな違いとして、「国民の分断」を提起しています。

「お金」を配れば、もらった人(受益者)ともらわなかった人(負担者)との間で「分断」が生じます。

当然の事として「負担者」には、「受益者」に対して「不正な利用者がいるのではないか」とかの「疑心暗鬼」が生じます。

また「受益者」に対しては、「救われる人間の心には屈辱が刻まれる」と見つめているのです。

これを防ぐためには、「みんなが受益者にするしかない」と言うのです。

そのやり方は二つです。下記に書き出します。

①「みんなにお金を配ること」
②「みんなにサービスを配ること」

この「①みんなにお金を配ること」は、上記で検討したように、お金がかかりすぎて不可能です。

しかし、「②みんなにサービスを配ること」は、必要な人しかサービスは使いませんから、安上がりだと言いうのです。

この井出教授の「国民の分断が怖い」との視点は、「政治の視点」だと思いますね。

これを読んでも、井出教授は「学問の世界」から、「政治の世界」に足を踏み入れていることを感じますね。

「政治」とは、「大きな塊をつくる技術」だと、コロちゃんは考えています。

どんな良い政策であっても、多くの人々が望まない政策は実現しません。そのために必要なのは「多くの方が支持している」という事実なのだと思うのです。

だから「国民を分断」するような政策は、短期的には分断した片方の支持で実現しても、いずれは分断のもう半分からの反発が起こります。

その結果は「大きな塊」は出来ずに、「分断」された二つのいがみ合いが残るようになるでしょう。

この「ベーシックサービス」と言う政策は、ひょっとしたら「みんなが受益者」となる可能性を秘めていると言うだけで、試すだけの価値がある「政策」だと、コロちゃんは考えますね。

7.「増税すると、所得格差は縮小する」

井出教授は、「増税」を否定していません。それは「増税」すると「格差は縮小」するからです。その理由と内容をわかり易く書いています。

本書ではイラストで説明していますが、ここでは書きに書いてみますね。

イラストのテーマは「ベーシックサービスによる再配分のモデル図」です。

◎「Aさん」
①「当初所得 200万円」
②「税率25% -50万円」
③「税引き後 150万円」
④「みんなにサービスを現物給付 +150万円」
⑤「最終的な暮らしの水準     300万円」

◎「Bさん」
①「当初所得  600万円」
②「税率25% -150万円」
③「税引き後  450万円」
④「みんなにサービスを現物給付 +150万円」
⑤「最終的な暮らしの水準     600万円」

◎「Cさん」
①「当初所得  1000万円」
②「税率25% -250万円」
③「税引き後  750万円」
④「みんなにサービスを現物給付 +150万円」
⑤「最終的な暮らしの水準     900万円」

●上記の「Aさん当初所得200万円」と「Bさん当初所得600万円」を比較すると、3倍の格差があります。

この3倍の格差が「Aさん最終的な暮らしの水準300万円」と「Bさん最終的な暮らしの水準600万円」と、2倍にまで縮小します。

●次に「Cさん当初所得1000万円」と「Aさん当初所得200万円」を比較すると、5倍の格差があります。

この5倍の格差が「Cさん最終的な暮らしの水準900万円」と「Aさん最終的な暮らしの水準     300万円」と、3倍にまで縮小します。

イラストじゃないとわかりにくいかもしれませんが、このポイントは「貧しいAさん」は、払った税金「税率25%-50万円」よりも、多くの受益「みんなにサービスを現物給付+150万円」があるのです。

「税率は同じ」でも、「税の負担額」が違ってくることで、「貧しい人の税額は少なく」、「お金持ちの人の税額が大きくなる」のですから、「格差」が縮小するのは当然だと主張するのです。

この誰もが嫌がり反対する「増税」が、社会の「格差を縮小する」と言う事は、「消費税の税率が高い」ヨーロッパ諸国での格差が小さいことからも実証されています。

本書では、ニューヨーク大学のモニカ・プラウドの言葉を引用しています。

「貧困と不平等の削減にもっとも成功した国々では、富裕層に課税し貧困層にそれを与えることでやり遂げたのではない」と。

現在の既成政党の「消費税」に対する姿勢には、「消費税廃止」や「消費税時限引き下げ」と唱える政党が多いです。

しかし、もし消費税10%を廃止すると28兆円の「財源」をどこかに求めなければならなくなります。

消費税5%への引き下げでも、14兆円の「財源」が必要です。それを考えると、安易な消費税廃止や税率引き下げには、コロちゃんは同意することはできませんね。

「政治の世界」の素人であるコロちゃんでも、その「財源」がどこにもないことぐらいはわかりますよ。

8.「井出教授の覚悟が見える」

井出教授は、1972年生まれとありますから、現在は「団塊ジュニア世代」の52歳ですね。東京大学を卒業して、現在は慶応大学教授ですから「エリート」だと誰もが思いますが違います。

本書には、井出教授の生い立ちや家族についても書いています。

井出教授は、福岡県の貧しい「母子家庭」で育ったとあります。井出少年は、母の経営するスナックのテーブルで勉強するのが日課だったと書いています。

そして学生時代の母の「借金まみれ」と言う現実があり。家賃の滞納や仕送りの遅れがあったと書いています。

その中での「大学院進学」を、井出青年は母に電話で伝えると、お母さんは「あんたの人生やけん、あんたのよかごつせんね」と答えたと書いています。

凄いお母さんですね。

貧窮の中で、お母さんもいろいろ助けて欲しかったでしょうに、子のためにこの発言。なかなかできるものではありません。

その電話を切った後に、井出青年は泣いたと書いています。

コロちゃんがこれを読んで感銘を覚えたのは、この内容よりもこの「告白」の事実です。

本書は「学術書」ではありません。あくまでも多くの人々に読んでもらうために書いた「啓蒙書」です。

「啓蒙書」の内容に欠かせないのは、「訴える力」です。

そのために井出教授は、何もわざわざ書かなくともよい、自らの出自を書いたのでしょう。

多くの人々の心に感銘を与えるのは、「正しさ」ではなく、「覚悟」だと言う事を、コロちゃんは、この書を読んで思い出しましたね。

そう考えて、本書全体を眺めると、訴えていることは「シンプル」です。

「みなさんから税金をいただいて、社会に必要な社会保障制度を無料で使えるようにする。そうするだけで格差は縮まるよ」

ほら、こんなにシンプルで単純なことなんです。しかし、これを現実に実行するとしたらものすごく困難です。

だからこそ、多くの人々にはわかってもらうために、具体的な数字を挙げた上で、自らの出自も打ち明けて語ることにしたのでしょう。

本書は、読みやすく、難解な数字の羅列もなく、簡単に短時間で読めて、「新しい社会の希望」が見える良書だと思いますよ。

コロちゃんは、皆さんにもぜひ読んでいただきたいと思っていますよ。

なお、井出教授は新聞の「経済教室」でも、ご自身の主張を書いています。見出しは「基礎的サービスの無償化を」です。

その「経済教室」を読んでみたい方は、下記のリンクのクリックをお願いします。

再考セーフティーネット 基礎的サービスの無償化を - 日本経済新聞
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コロちゃんは、社会・経済・読書が好きなおじいさんです。

このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に障りましたらご容赦お願いします(^_^.)

おしまい。

Annette MeyerによるPixabayからの画像
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