【社会考】対中「キャッチアップ阻止」は成功するか?

社会

おはようございます。今日の朝は、ちょっと肌寒い気温でした。つい先日は初夏の天気でしたが、春の天気は変わりやすいのかもしれませんね。

今日は、国際情勢の「対中半導体規制」の記事を読んで、ちょっと感じた点についてポチポチしてみたいと思います。

1.対立する「中国」と「アメリカ」そして「日本」

最近の新聞の国際面では、中国とアメリカの舌戦がしばしば活発に交わされています。

数年前には、「中国」と「アメリカ」が、こんなに対立するようになるとは、日本ではほとんど思われていなかったように思われます。

アメリカのオバマ政権の時代には、「G2体制の確立か」と言われるほどの、対中関与政策をとっていたのですからね。

それが、今では日本もアメリカの「対中包囲網」に組み込まれたかのように、アメリカと共に歩んでいるように感じられます。

いうまでもなく、日本は「中国」と国境を接する隣国です。その両国で緊張が高まることは、あまり良いことではないと、コロちゃんは思っています。

2.アメリカ国内の様子

いろいろポチポチ調べてみますと、アメリカ国内でも、米中の完全な分離が不可能という点では、専門家の意見では一致しているようです。

ですから、かつて米ソであったような冷戦構造の鉄のカーテン(1946年イギリスのチャーチル首相の演説)の再来は、今回の米中デカップリングでは、ありえないようです。

現に2022年の米中貿易総額は約6900億㌦と過去最高となっています。

現在問題となっているのは、「半導体産業」においてどこまで対中排除を進めるかについてだそうです。

アメリカ国内の「協調派」「中道派」「強硬派」の間で、この点での統一見解はいまだ出ていないようです。

現在のアメリカでは「中道派」と「強硬派」が主流となっているようですが、この間で駆け引きが行なわれており、まだ対中デカップリングについての合意は存在していないようなのです。

対中排除の領域として、コンピュター、バイオ、クリーンエネルギーが挙げられていますが、各分野における規制対象についても、まだ決まっていないようです。

ポチポチ調べてみると、はっきりと決まっていることは、一部の半導体製造装置以外にはまだないようです。

しかし、今後どう進むのかわからないことで、日本と世界が、アメリカに振り回されているようにも見えますね。

3.日経新聞のコラム記事

先日5月7日の日経新聞に、経営コンサルタントの「スタンリー・チャオ氏」のコラム記事が掲載されていました。

その記事は「遅きに失した米半導体規制」と題する記事でした。その記事をお読みになりたい方は、下記のリンクのクリックをお願いします。

遅きに失した米半導体規制 経営コンサルタント スタンリー・チャオ氏 - 日本経済新聞
米国は中国企業による先端半導体の技術購入を制限しはじめた。その結果、中国は固有の半導体産業の育成にますます力を注いでいる。中国の半導体技術は現時点で台湾やオランダ、米国とは比較にならないが、ゼロからのスタートとは言えない。2015年に「中国製造2025」の構想が始まって以来、中国企業は半導体で自前のサプライチェーン(供...

この記事では「米国による規制は回路路線幅が14㌨㍍以下の高度な半導体技術に適用された」と指摘しつつ、「しかし、中国はすでに14㌨㍍以下の生産に大きく前進している可能性がある」と記載しています。

「受託生産大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)は22年に7㌨㍍の半導体生産に成功した模様だ」とも書いています。

「米国は国内での半導体生産に527億㌦(約7兆円)の補助金を投じ・・・中国が準備中とされる1兆元(約20兆円)のパッケージ」と、中国の勢いを止めるにはすでに遅すぎたとしています。

コロちゃんは、もちろん素人ですから、半導体の技術的なことは何もわからないのですが、上記の記事を読んで、ホントかな? と首をかしげました。

4.「2030半導体の地政学」で読んだこと

つい先日に、コロちゃんは「2030半導体の地政学」という本を読みました。その内容に「半導体」の分野別の市場シェアの一覧表が載っていました。

半導体製造技術分野を見ると、アメリカが市場で首位の分野は、以下の分野です。

「半導体チップ(最終製品)」
「設計ソフト」「要素回路ライセンス」
「半導体製造装置」

台湾が市場で首位の分野は、以下の分野です。
「ファウンドリー」
「製造後工程」

日本が市場で首位の分野は、以下の分野です。
「ウエハー」

「中国」は「製造後工程」に、2位で出てくるだけです。この市場シェアを見ると、「半導体製造」のほとんどの工程で、アメリカは中国を圧倒的しています。

コロちゃんは、この半導体市場の現状をみると、中国が先端半導体でキャッチアップを果たすのには、5年では絶対無理で、10年ならばどうかなというくらいに困難だと思いました。

なお、この「2030半導体の地政学」は、コロちゃんが【読書考】で紹介のブログを書いています。

これをお読みになりたい方は、以下のリンクのクリックをお願いします。

【読書考】「2030半導体の地政学」を読んで

5.専門家による三つのシナリオ

コロちゃんは、この対中半導体規制の行方について、興味はありますが、素人のおじいちゃんですから、理解できることはごく一部にとどまります。

そのなかで、ポチポチ調べていると、専門家が中長期の展望として三つのシナリオを挙げているのを読みました。

1つ目は、「中国半導体産業の大幅な弱体化」です。対中規制の拡大で、中国国内における先端半導体の生産が不可能となるシナリオです。

2つ目は、「米国由来技術抜きの供給網構築」です。しかし、米国も日本やオランダに対中規制で歩調を合わせようとさせてますから、これはおそらくあり得ないのではないのでしょうか。

3つ目は、「中国半導体産業の自立化達成」です。

現時点で多くの専門家は、中国が西側諸国の技術なしに半導体産業の高度化・国内化を実現することは極めて困難と見ているようです。

そのため、1つ目か2つ目のシナリオの可能性が高いと、専門家は判断しているようです。

しかし、同時に中国は先端技術ではない、自国生産が可能なレガシー半導体で、市場を握る可能性があると専門家は言っています。

レガシー半導体とは、微細な加工技術を必要としないことでレガシー(過去の遺産)と言われているものだそうです。これらの半導体は、車の制御に欠かせない半導体だそうです。

なるほど、中国は先端半導体を作り出すことは無理でも、汎用品のレガシー半導体の量産に成功する可能性はあるということですね。

そのクラスの半導体製造のキャッチアップは、5年後ぐらいにはできるかもしれないという指摘は説得力があると、コロちゃんは思いました。

6.日本半導体に1980年代に起きたこと

コロちゃんは、この対中半導体規制を見て、かつて1980年代に世界を席巻していた日本の半導体産業が、アメリカから徹底して叩かれた歴史を思い出しました。

1980年代に、日本の半導体産業は全盛期でした。

高い技術力の下で、売上高でもアメリカを抜いて、世界シェアが50%を超えたこともありました。

それに対しアメリカは「アメリカへの進出は安全保障上の問題がある」として反ダンピング課税を課すなどの、激しい批判を繰り広げたのです。

そして「日米半導体協定」を結ぶこととなり、多くの協定で縛られた半導体産業は、その協定が満期にになる1990年代末には、すっかり勢いを失うこととなっていました。

アメリカへの、当時の日本の半導体産業の挑戦は、日本の完膚なきまでの敗北となりました。

しかし、今回の対中規制は同じ道をたどるのでしょうか。それとも・・・。

今後どのように進行するのかを、コロちゃんは興味津々で見ていきたいと思います。

7.中国は世界最大の半導体市場

現在、中国の半導体市場は世界最大となっています。

そして、アメリカ半導体製造装置大手3社の、2022年の売り上げ高に占める中国市場の比率は、約3割に達しています。

現在のところ、アメリカの対中半導体規制は、「ロジック半導体」で回路線幅10~14㌨以下といった先端技術分野が対象で、成熟分野の製造装置の輸出は可能となっています。

これらのアメリカ企業にしてみれば「中国事業を失えば、企業全体の収益が悪化して研究開発に悪影響が出る」という本音が漏れ聞こえています。

世界の半導体業界にとって、中国市場は世界最大であるために無視することはできません。

先端事業を守りながら、売り上げを上げようとする西側企業と、先端技術を獲得しようとする中国企業のせめぎあいが、どのような着地点に落ち着くのか、今後の5~10年で明らかになるのでしょう。

8.今度の「半導体戦争」はどうなるのだろう?

もちろん中国は、その1980~90年代の日本の半導体産業に起きたことは、当然調査・学習していることでしょう。

アメリカは、自国の基幹産業に挑戦してくる相手には、たとえ同盟国と言えども容赦はしません。

ましてや、相手が「中国」では、更に苛烈な対応を取っても不思議ではありません。

今後の両国の半導体をめぐる軋轢がどのように進むのか、今の段階ではまだわかりませんが、間にある日本に大きな影響がないことを望むばかりですね。

今日のポチポチでは、今回の「半導体」をめぐる「対中キャッチアップ阻止」が成功するかどうかは、現在ではわからないという結論になりました。

しかし、米中で半導体をめぐるこのような情勢にあるということが分かったことは興味深いですね。

ますます、ニュースを見る目が深く広くなったと思います。このブログをお読みの皆さんも、ぜひ興味を持っていただければ幸いです。

コロちゃんは、社会・経済・読書が好きなおじいさんです。

このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に障りましたらご容赦お願いします(^_^.)

おしまい。

Frauke RietherによるPixabayからの画像
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