コロちゃんは、最近新聞を読んでいると「安い日本」とか「先進国から脱落」とかよく見かけるんですが、その度にどうも違和感を感じるんですよね。
今日は、その違和感について考えてみたいと思います。
1.現在の日本と未来の日本
国の豊かさを比較するためには、よく「GDP」という数値を聞きますよね。「国内総生産」と翻訳される経済用語ですが、日本は2021年現在で、アメリカ、中国に次ぐ世界第3位です。
全世界で200ヵ国以上ある中での3番目ですから、立派なものなんですが、これは国家全体を表しています。日本は1億人以上の人口大国ですから、GDPの総額が大きくなるのは当然なんです。
その数値を国ごとに比較するんですが、日本はこの数値が、どんどん下がっていることから「安い日本」とか「先進国から脱落」とか騒がれるわけです。
先日には「2075年に日本はGDP順位が世界12位にまで落ち込み、経済大国から脱落する」との報道までありました。
2.一人当たりGDPの国際順位と金額
国民一人当たりの「豊かさ」の指標としては、「一人当たりGDP」という数値が使われます。
下記の表は2022年の「一人当たりGDP」のIMFと世界銀行の国際順位のデータですが、世界の20位台後半に落ちてきています。
日本は、国全体で比べると世界3位ですが、一人当たりで比べると28位になるというわけですね。
だけど、コロちゃんはこれを見て思うんですよね。一億人以上の人口で日本より上位の国はアメリカだけだよねって。
人口の多い国が成長するって、なかなか難しいことがこの順位からも分かります。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%90%84%E5%9B%BD%E3%81%AE%E4%B8%80%E4%BA%BA%E5%BD%93%E3%81%9F%E3%82%8A%E5%90%8D%E7%9B%AEGDP%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88
引用:ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典 2022年9月22日更新
3.韓国と台湾に追い越される
最近の報道で、IMFと世界銀行の予測として、豊かさの指標である「一人当たりGDP」で2022年に台湾に、2023年に韓国に追い越されるとの試算をまとめたとありました。
後発国の成長は、既に経済成長の方式がある程度分かっているキャッチアップシステムですから、経済運営が上手く出来る国はそれなりの成長を成し遂げられます。
我が日本は、そのキャッチアップで、過去に壮大な高度成長を成し遂げて、東アジアでいち早く先進国に駆け上ったのです。
そのキャッチアップ日本が、更に上を目指して大きな成長が出来るかというと、それは難しいのではないかとコロちゃんは思うのです。
同じ東アジアの両国に追い越されることは、ちょっと残念で有り悔しいことかも知れませんが、台湾の人口は約2300万人、韓国は約5200万人です。
日本よりも人口が少なく、小回りが効いたことが、両国が日本をキャッチアップして、追い越す寸前まで成長出来ている理由のひとつではないでしょうか。
4.これで衰退してるのかな
日本が27位とか28位とかの順位を見て、それが将来も下がる予想を聞くと、日本は衰退しているのかなと思ってしまいますが、下記の表をご覧ください。
国民それぞれの「豊かさ」を表す「一人当たりGDPの金額と国際順位」のデータです。
これを見ると、日本のGDPの国際順位はダダ下がりですが、金額はジグザグは有りますが横ばいに推移してますね。
という事は、日本のGDPが低下したのではなく、よその国が成長したと見た方が適切なのではないのかなと思ったのです。もちろん、なぜ日本は成長できなかったのかという疑問は残りますが。
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/html/nc123110.html
参照:総務省 平成26年版 情報通信白書 我が国における国際競争力の評価.(1月14日利用)
5.先進国は、いずれどの国も成長は止まる
しかし、キャッチアップはあくまでも「追いつく」までで終わります。それ以上に一人当たりGDPを伸ばそうとするならば、現在の日本と同じ境遇になると思います。
成熟した資本主義の市場で、更に大きく成長する経済モデルは、今のところも歴史上もどこにもありません。
正確には、移民による人口増で成長するアメリカモデルがありますが、これは簡単に模倣することはできないと思います。
6.なぜ日本だけ成長できないのか
途上国が先進国にキャッチアップしようとする経済政策の「開発独裁型」はよく知られています。
日本の高度成長を研究した、韓国の「漢江の奇跡」やマレーシアの「ルックイースト政策」は有名です。
先進国にキャッチアップする事は、一定の条件の下では容易くはなくとも不可能ではない事は多くの事例が証明しています。
しかし、1億人以上の人口大国で、先進国に進んだ国は上記の表を見ても分かる通り、日本とアメリカだけです。
これをどう考えれば良いのでしょうか。
コロちゃんは、人口大国が先進国にまで成長する事は、もともと困難で稀なことなのだが、日本はそれを運良くクリアして成長することが出来た。
しかし、人口大国が先進国に到達した後には、国内市場が成熟するために、更に成長することが困難となったと考えています。
7.資本主義の内包する限界
現在は、グローバルな資本主義経済が世界を覆い尽くしています。権威主義国家であろうと、共産主義国家でもその経済システムは「資本主義」です。
資本主義ですから、経済成長と利益・収益を求めるのは当然の世界です。みな競って更なる成長を追い求めます。しかし成長には限界はないのでしょうか。
最近ではSDGsなどの環境問題も取り上げられ、無限の成長を受け入れるだけの容量は地球には存在しないとの考えも出てきています。
しかし、ここで見ているのは、それとは別に経済システムとして、成長が頭打ちになってしまう状況が金融経済には内包しているのかも知れないという問題です。
日本は、もう30年以上も低い成長を漂っています。多くのみなさんが、なんとか成長軌道に戻して、30年以上前に戻ろうとしています。
しかし、それは「見果てぬ夢」かも知れないとコロちゃんは思うのです。
8.ケインズの予言
少し前に読んだケインズのエピソードがあります。経済学者のケインズは1928年に母校のケンブリッジで講演をしそうです。そこで以下の様に語ったそうです。
「イギリスの資本は3.25%成長を続けている。これがもっと続けば経済は間違いなくずっと豊かになる。・・・すると人類の経済問題は基本的に解決してしまう」
「100年後の私たちの孫の時代には一人当たりの生産性は4~8倍となり、豊かな社会が訪れるだろう」
「労働時間は1日3時間も働けばよくなり余った時間を如何にすごすかが人類の重要な課題となる」
これを読んだ時にコロちゃんは、ケインズってずいぶんナイーブな人だったんだなって思いました。
ケインズは、生産性が上がれば労働時間は短くなると確信していたのです。
しかし、現在の世界をみてもわかる通り、企業は生産性が上がって収益が増えても労働時間を減らすどころか、賃上げすら充分に行っていないのが現実です。
この講演より90年が経過したイギリスでは、もう一人当たりのGDPは当時の4倍を超えているそうですが、労働時間は1日3時間にはなっていません。
ケインズの予言は外れたのです。
ケインズは、資本主義経済は、いくら豊かになっても更に成長を求め続けるという性質を見抜けなかったのでしょう。
ケインズのこの講演は、資本主義経済はいずれ成熟して、もうそれ以上働かなくても良くなる時が来る事を示唆しています。
もう需要が増えなくともよい社会になったら、それ以上に生産しなくとも良い社会になるわけですから、労働時間が短くなるはずだと。
そしてこの示唆は、資本主義が成熟して、もう成長しなくともよい段階に達したから日本は成長ができないんじゃないのかと言う考察に繋がります。
9.日本が貧しくなったとは思わないよ
この様に数値を冷静に見ると、コロちゃんには日本が貧しくなったとは思えません。「後発国が追い付いてきた」だけと見えるのです。
ですから、日本は更に成長することを目指すのではなく、築き上げた現在の国民生活を維持することに注力すべきと思つています。
日本は、ここ30年以上、大きな経済成長はしてないんです。日本国内の「パイ」は少ししか大きくなっていない。それを奪い合っているのが現状ですから、上手く分配すれば良いのだと思います。
日本には、分け合えば皆んなが豊かに生きられるだけの資産があると、コロちゃんは思っているのです。
コロちゃんは、社会・経済・読書が好きなおじいさんです。
このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に触りましたらご容赦お願いします(^_^.)
おしまい。
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