【社会考】非正規雇用って減らせないの?

社会

コロちゃんは、この【社会考】で、日本のいろいろな問題を考えたりしていましたが、どの問題を考えても「非正規雇用」がどこかで顔を出してきます。

「賃金が上がらない」「生産性が上がらない」「少子化」「未婚」等々。

「非正規雇用」という言葉は、あんまり良い意味では使われていないんですよね。

コロちゃんは、何とかして、「非正規雇用」を減らせないかなーなんて考えながら、新聞を広げたりしているんですよ。

今日は、その「非正規雇用」について、ポチポチお話してみます。

1.今、非正規雇用はどのくらいいるのか?

下記のグラフをご覧ください。

https://www.stat.go.jp/info/today/097.htm#k1
出典:総務省統計局 広報資料 統計Today No.97 より(3月27日利用)

上記のグラフをご確認ください。「非正規数」は、1990年以降一貫して右肩上がりに上昇しています。

1990年以降の長期的な推移をみると、1990年(バブル崩壊年)に881万人だった「非正規雇用者数」は、2014年(アベノミクス2年目)に1962万人と2倍以上になりました。

現在直近の2022年10-12月期のデータですと、「非正規雇用者」は、さらに増えて、2129万人と発表されています。

1990年から、30年たって「非正規雇用者」は2倍以上に増えているのです。

これだけ「非正規雇用者数」増加してくれば、社会の様々なところに影響が出てくるのは、当然のことです。

2.非正規雇用の増大は、いつから始まったのか?

下記のグラフをご覧ください。

https://www.mhlw.go.jp/content/001041163.pdf
出典:厚生労働省 「非正規雇用」の現状と課題より(2月10日利用)

上記のグラフで、「正規雇用」の青の棒が、1994ー2004年まで、減少しているのが確認できます。

そして、「非正規雇用」の黄色の棒が、「正規雇用」の減少を補って増えているのだ分かります。

この「正規雇用の減少」と「非正規雇用の増大」が起きた期間が、「就職氷河期」です。

下記の引用をご覧ください。

「就職氷河期」

就職氷河期は、日本において1991年(平成3年)のバブル崩壊の経済的な不景気(不況)以降に就職難となった時期を指す。」

「(1993-2000年卒)、(1993ー2005年卒)が該当すると考える専門家もいる。失われた世代、ロストジェネレーションと呼ばれることもある。」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%B1%E8%81%B7%E6%B0%B7%E6%B2%B3%E6%9C%9Fウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典:「就職氷河期」2023年3月16日 (木) 12:07

日本企業は、この「就職氷河期」をきっかけにして、一斉に「正規雇用」を削減し「非正規雇用」を増やし始めたのです。

良くも悪くも、日本人は同調圧力の強い集団主義の社会です。当時の日本企業も、一斉に同じビジネス手法に、雪崩を打って向かったと言えると思います。

3.「就職氷河期」は、なぜ起こったのか?

「就職氷河期」というネーミングは、雑誌「就職ジャーナル」がつけたと言われています。

1994年の「流行語大賞」を受賞したことで、この名前が社会全体に広がりました。

1990年以降のバブル崩壊に伴う不況の長期化で、1993年頃から就職難が社会的に問題化したことから、このネーミングが定着しました。

就職氷河期が起こった原因は、1990年のバブル崩壊がきっかけです。

バブル時代に人員を採用しすぎていた企業が、一斉に採用数を絞ったのです。

これも同調圧力・集団主義の現れかもしれません。

4.非正規雇用は、その後も増え続ける

一度、安上がりな労働力の導入に手を染めた企業は、もうそれを手放すことはしません。

労働者派遣法の改正もそれを後押しします。

1996年、1999年、2000年、2004年、2006年、2007年の労働者派遣法の改正は、すべて「規制緩和」です。

その後、2008年のリーマンショックで、日本企業は、一斉に「労働者派遣切り」に走り、世の中を騒がしました。

その後の2012年になって、ようやく政府は、労働者派遣の「規制強化」に舵を切り変えたのです。

しかし、その後も「非正規雇用者数」は、増え続けています。

5.社会のデメリットのほうが大きくなったんじゃないの?

上記でも書きましたが、2022年10-12月期で、全体の雇用者5710万人中、非正規雇用は2159万人(37.3%)と発表されています(総務省統計局労働力調査)。

全体の4割近くが、非正規雇用者となると、様々な弊害が社会に顕在化してきています。

①賃金の格差

下記のグラフを、ご覧ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-03-24.html
出典:厚生労働省 令和2年版 厚生労働白書ー令和時代の社会保障と働き方を考えるー 図表1-3-24 正規雇用労働者・非正規雇用労働者の賃金の推移(雇用形態別・時給(実質)ベース) より(3月27日利用)

上記のグラフは、「正規雇用」と「非正規雇用」の賃金の推移のグラフです。

4本のラインの内、上部の2本は「正社員・正職員」です。

下部の2本が「正社員・正職員以外」です。その賃金の格差の大きさは、男女計の平均で67%と言われています。

この数値は、国際的にも「格差」が大きい方に入ります。

「非正規雇用」が、全体の4割近くを占めているとなると、「正規雇用」への道は「椅子取りゲーム化」してしまいます。

「非正規雇用」から、誰かが上方に脱出すれば、「正規雇用」から誰かが落ちてくるようになっているのではないでしょうか。

また、景気拡大のために「消費を拡大」しようにも、全体の4割が低賃金の「非正規雇用者」で占められていては、「総雇用者報酬額」も増えていきません。

「非正規雇用」が4割近くに迫るという数字をみると、その存在は、今では日本社会に「低所得層」が増え続けている原因・元凶となってしまっているのではないでしょうか。

②生産性向上の障害

「非正規雇用者」は、建前上は、短期間の勤務雇用者です。短期間でやめる雇用者に、お金をかけて教育訓練する企業は多くはありません。

結果的に「非正規雇用者」は、自分のスキルを向上させる機会を持てないままに、長期間の「非正規雇用」をずるずると続けることとなります。

これは、企業の面から見ても、直近の人件費の削減にはなりますが、中・長期的な生産性向上の阻害要因となっています。

下記のグラフをご覧ください。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000120286.pdf
出典:厚生労働省 「非正規雇用」の現状と課題  【正規雇用と非正規雇用労働者の推移】より(3月27日利用)

上記のグラフは、事業所における教育訓練の実施状況です。

OJTとは、「On the Job Training」の略で、新人や未経験者に対して、実務を体験させながら仕事を覚えてもらう教育手法です。会社内の社員教育です。

OFFJT(Off the Job Training)とは、職場を離れた場所での研修や学習全般を指します。業務を行う上で、必要な知識や技術を、座学やe-ラーニングなどで学ぶことです。

この二つは、生産性を上げる重要なアイテムです。

日本でのOJTは、1960年代にアメリカから導入されて、高度成長の原動力となりました。

それが今では、どの企業でも、OJTとOFFJTに費やす金額が減少しています。

上記の表で分かるように、特に「非正規雇用」に対する企業の教育訓練の実施率には「正規雇用」と、大きな差があります。

「非正規雇用」では、生産性の向上は難しいのです。

これが、日本経済全体の生産性の低迷の原因の一つなのではないでしょうか。

③結婚率の低下

2月末に公表された、人口動態統計速報によりますと、20220年の出生数は79.9万人と、はじめて80万人を割りこんだとされています。

これは、在日外国人や在外外国人を含んでいますので、日本にいるに日本人の確報ベースでは、77万人前後となるようです。

まさに「少子化日本」ですが、その対策には「結婚数」の増加が不可欠です。

それでは、どうしたら「結婚数」の増加ができるのでしょうか。

下記のグラフをご覧ください。

https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2016/28webhonpen/html/b1_s1-1-3.html
出典:内閣府 平成28年版少子化対策白書  第1部 少子化対策の現状(第1章 3)より(3月28日利用)

上記のグラフを見てもわかりますが、「非典型雇用」の男性の「配偶者のいる割合」は、「正社員」の半分以下なんです。

「非典型雇用」男性が「正社員」男性になるだけで、結婚数は大きく増えるのではないでしょうか。結婚数が増えれば、当然にして子どもも生まれてきます。

下記のグラフをご覧ください。

https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2016/28webhonpen/html/b1_s1-1-3.html
出典:内閣府 平成28年版少子化対策白書  第1部 少子化対策の現状(第1章 3)より(3月28日利用)

上記のグラフを見てもわかりますが、男性の「配偶者のいる割合」は、年収にパラレル(同時進行)に連動しています。

低い年収の男性が結婚しにくいという風聞は、この表で確認できるんです。

低い年収の「非正規雇用男性」が「正規雇用男性」になるだけで、日本の婚姻率は上昇するのではないでしょうか。

6.「非正規雇用」というシステムは使命を終えた

上記で見てきたように、この「非正規雇用」数が増加したのは、1990年代末のバブル崩壊後の日本経済の低迷(就職氷河期)からです。

当時の日本では、山一證券の廃業や日債銀の破綻などの、金融システムを揺るがす大事件が続発していました。デフレスパイラルによる景気低迷も顕著に見られました。

その時点を今から振り返ってみると、緊急避難としての「非正規雇用」の拡大も、やむを得なかったのかもしれません。

しかし、今では、その「弊害」があちこちで目につきます。

「フリーター」を言う言葉があります。1987年(バブル真っ最中)にリクルートのアルバイト情報誌「FromA」で最初に使われた造語です。

今では考えられませんが、その当時「フリーター」という言葉は、「自由な生き方を追求する」というポジティブな意味の使われ方をしていたのです。

「非正規雇用」には、現在でも「多様な生き方」や「自由な選択」という、きれいな言葉が付きまといますが、現在では「弊害」の方がはるかに大きいと認めるべきだと思います。

すでに、「非正規雇用」が社会で大きな役割を果たした時代は終わったのだと思います。

あとは、混乱を少なくするために、少しづつ「正社員化」へと誘導するのがよいと思います。

そうすれば、少なくとも上記で考察しました「貧困」「生産性」「結婚(少子化)」という難問には、一つの解答がでるのではないでしょうか。

コロちゃんは、社会・経済・読書が好きなおじいさんです。

このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に障りましたらご容赦お願いします(^_^.)

おしまい。

PetraによるPixabayからの画像

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