【社会考】「賃金カーブ」について考える

社会

おはようございます。今朝は雨が降ったりやんだりしていたようでした。朝からしばらくは雨が降っていたのですが、その後に雨が上がると、一気に暑さがぶり返してきました。

ムシムシとむし暑い天気は最悪ですね。コロちゃんは、再びクーラーのスイッチを入れて、ワンコと共に室内に籠るようになりました。

早く「秋晴れ」が来ないかなー、とつぶやいたコロちゃんでした。

今日は「賃金カーブ」についてポチポチします。

1.「賃金カーブ」の時代変化

コロちゃんは、先日に「経済財政白書2023」を題材にしてブログ原稿をポチポチしました。その時に、日本の企業の「賃金カーブ」を見ていて、いろいろ感ずることがありました。

そこで今日は、その「賃金カーブがフラット化」した現在の日本についてポチポチします。

私たちが仕事を探して、あれこれ就職活動をするときに、一番重視することはやはり「お給料・年収」ですよね。

その参考とする「お給料・年収」は、当然にしてその時点の「初任給」であり、その時点にその会社に勤めている他の方の「お給料」になると思います。

しかし、日本の会社は、務めた年月が長いほど給与が高くなる「年功制」の部分がある場合がほとんどです。

その「年功制部分」を含めた「お給料」が、将来は上がらなくなるなどということは考えもしません。

しかし、現実に過去を数字で振り返ってみると、日本の企業はその入社時の暗黙の了解である「お給料の増加」を、大きく削減してきたことがデータで確認できるのです。

2.「賃金カーブ」のフラット化

皆さんがお勤めになっている会社の年代別の「賃金カーブ」をポチポチしてみると、きちんと調べて発表しているところがありました。

その「賃金カーブ」を見ていると、かつて先輩たちが受け取っていた「お給料」と、現在の若い方が受け取っている「お給料」とでは、大きな違いがあるのです。

先輩たちの「賃金カーブ」は「高い山」を築いていましたが、現在の若い方の「賃金カーブ」は、「低い山」となっており、「フラット化」が進んでいるのです。

①年配の先輩は「高い山」、現在の若者は「低い山」

下記のグラフをご覧ください。

「労働政策研究・研修機構 賃金カーブ」より

https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0405.html
出典:労働政策研究・研修機構 早わかり グラフでみる長期労働統計 賃金カーブ より(9月9日利用)

上記は、1976年・1995年・2021年の「性別、年齢階級別」の「賃金カーブ」です。

グラフの上の三つの線が「男性」の「賃金カーブ」、下の三つの線が「女性の賃金カーブ」です。

〇「男性」

「男性」の山の頂が一番高いのは「1995年」のラインです。

「20~24歳」の「平均所定内賃金額」を100としたときの「各年齢階級の平均所定内給与額」を見ると、1995年は2.2倍となっていますが、直近の2021年では、1.9倍にしかなっていません。

1995年と2021年の26年間の間に、「お給料」の上昇が少しずつ下振れされてきているのです。

〇「女性」

「女性」の「賃金カーブ」は、最初から「フラット化」しています。

1976年のラインでは、全年齢を通じて「お給料」が上がっていません。35~44歳では、逆に20~24歳時点よりも下がってしまっています。ひどいものですね。

「男女雇用機会均等法」の施行は1985年ですが、それ以降となるこのグラフの1995年と2021年では、さすがに少しラインが盛り上がっていますが、「山」というほどの高さではありません。

男性のグラフが「山」とすると、女性のグラフは「丘」でしかなかったのです。男女の賃金の差は、このグラフで一目瞭然と言えますね。

②1976年、1995年、2021年という時代

ちなみに、この「1976年、1995年、2021年」という三つの年に、日本がどのような時代背景であったかを、コロちゃんの記憶に基づいて下記に記載します。

①1976年 

1973年に第4次中東戦争がはじまり、石油危機となりました。その影響で1974~1975年は大不況となりましたが、1976年はそこからの回復の時点です。

しかし、日本経済はそれ以前の10%以上の「高度成長」に戻ることは無く、以後は4~5%の「低成長の時代」となりました。

この年のコロちゃんは、20代前半の「イケイケ」の怖いものが何もなかった時代でした。今は亡き妻と知り合ったのもこのちょっと前でしたね。「楽しい時代」でした。

②1995年 

バブルの崩壊は1991年ですが、その後は失われた10年と言われる「バランスシート不況」が続きます。

しかし、1980年代末期に上がった賃金水準を急に下げることができません。

このグラフの、1995年の男性の賃金カーブが一番高い理由は、企業は高齢社員の賃金を削減することができなかったことがあると思います。

その時多くの企業は、新卒採用を抑えることによって、人件費負担を削減したのです。

「就職氷河期」は1993~2005年と言われています。ちょうどこの時代ですね。

この年のコロちゃんは、40代前半で子育て真っ最中でした。わき目もふらずに一生懸命に仕事に注力し、賃金を上げようと夢中で働いていましたね。

③2021年

この年は一昨年ですから、皆さんも良く覚えておられるかと思います。入社後に何年たっても「お給料」が上がらないと、こぼす方が増えたのではないでしょうか。

既に「賃金カーブ」が、このグラフよりも更に「フラット」な会社が激増しています。

いわく「何年勤めてもうちの会社は昇給しない」と、語る方が増えてきたと思います。

コロちゃんは、一昨年はもう「リタイヤ年金清貧生活」に入っていましたね。腰痛を抱えながら、けなげに生きていました。
(˶˚ ᗨ ˚˶) ニパッ

③話が違うよね

上記のグラフを参考にしてみますと、1995年に20歳で入社した若者がいたとすると、その若者は40代後半の先輩社員が新入社員の2.2倍の「お給料」を受け取っているのを見たことでしょう。

しかし、その若者が40代になった2021年には、若者の1.6倍程度しか受け取ることはできませんでした。

なんか、納得できませんよね。「話が違う」って叫んでも不思議はありません。

「日本型雇用慣行」というのは、「若年期には低い賃金、中高年期には高い賃金」を得る仕組みとなっていたはずです。

それが、本人の了承も取らずに、いつの間にか「若年期には低い賃金、中高年期にも低い賃金」となってしまったのです。

3.勤続年数による「賃金カーブ」

上記では、年齢階級別の「賃金カーブ」を見てきましたが、次に「性別・勤続年数別の賃金カーブ」を見てみましょう。

下記のグラフをご覧ください。

「労働政策研究・研修機構 賃金カーブ」より

https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0405.html
出典:労働政策研究・研修機構 早わかり グラフでみる長期労働統計 賃金カーブ より(9月9日利用)

上記のグラフは、「性別・勤続年数別の賃金カーブ」です。これを見ると、興味深いことがわかります。

〇「男性」

このグラフを見ると、1976年ー1995年ー2021年と、どんどん賃金カーブがフラット化して、年齢を重ねても賃金の上昇率が低下してきています。

このグラフの縦軸は「各調査年での男女計の『勤続0年』の平均所定内賃金額を100とした時」です。

ですから、1976年時点の「勤続30年」と言えば、50代の先輩社員でしょう。

その50代の先輩社員は、新入社員の2.4倍の「お給料」を受け取っていたわけです。

それを仰ぎ見ていた新入社員が30年以上の勤務を積み重ねて、自分が50代後半となった2021年には、新入社員の1.6倍しか受け取れなくなっていたということになります。

上記「年齢階級別の賃金カーブ」で見た風景は、こちらの「勤続年数別の賃金カーブ」でも裏付けられているのです。

これは「話が違う!」って怒るべきことでしょうか、それとも「こんなはずじゃなかった」と自分を責めるべきなのでしょうか。

「男性」の50代とは、「子どもの進学費用」や、自らの「老後の貯えなどの準備」を進める「人生タイムテーブル」の重要な時期です。

しかし、1976年のラインの男性ならば、その重要な時期を「高い給料」で乗り切ることができたでしょうけど、2021年のラインの男性には、とても困難なこととなるでしょう。

それが、この「賃金カーブ」を見るとはっきりとわかるのです。

〇「女性」

女性の「賃金カーブ」は、勤続年数を重ねても男性に比べて、緩やかにしか上がっていません。

「男女雇用機会均等法」の施行は1985年ですから、それ以降の1995年のラインには「勤続年数30年以上」で上昇が見られます。

これは「男女雇用機会均等法定」に一定の効果があったと思われます。

そして、2021年のラインになると、「勤続0年」の初任給は上がっていますが、「勤続20年以上」には逆に下がってしまっています。

その理由は、はっきりしませんが、多くの女性が結婚後も退職することが少なくなったことと関係があるのではないかと、コロちゃんは思いました。

いずれにしろ、女性の賃金は男性と比較して60~70%にとどまっていることわかっています。

4.「フラット化」するなら「初任給を上げて」

上記で、「性別・年齢階級別賃金カーブ」と、「性別・勤続年数別の賃金カーブ」の二つのグラフを見てきました。

「年齢階級」と「勤続年数」ともに、「賃金カーブ」が時代と共に「フラット化」してきていることがはっきり見て取れました。

多くの企業は「新卒採用時」の給与は変えないで、採用後の昇給カーブをフラット化することにより「利益」の最大化を図ったのでしょう。

その「賃金カーブ」の「フラット化」はいきなり行なわれたのではなく、上記のグラフでみると1976~2021年と40年以上かけて徐々に進められてきています。

もともとの「賃金体系」は、「日本的労使慣行」により「若年期には生産性より低い賃金、中高年期には生産性より高い賃金」という事への、労使の暗黙の了解があったと思われます。

しかし、現在では「海外のようなジョブ型」への声や、「リスキリングで転職」などがもてはやされる時代となっていますから、かつてのような「山が高い賃金カーブ」へ戻ることは難しいでしょう。

そうであるならば「若年期から高い賃金」「初任給の高い賃金」としなければ、整合性が取れないとコロちゃんは思います。

もう「若年期には生産性より低い賃金、中高年期には生産性より高い賃金」ができない時代だというのは仕方がないかもしれません。

しかし、そうであるならばこそ「若年期には生産性に見合った賃金、中高年期にも生産性に見合った賃金」でなければならないと考えます。

いつの間にか、勤続年数が長い方の賃金が抑えられているような現状は、おかしいのではないかとコロちゃんは考えます。

コロちゃんは、社会・経済・読書が好きなおじいさんです。

このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に障りましたらご容赦お願いします(^_^.)

おしまい。

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