最近新聞で少子化対策の話をよく目にします。そう言えば岸田総理も今年の年頭の挨拶で「異次元の少子化対策」を言ってました。
「異次元の○○○」って、以前にも聞いたことありますよね。そうです10年かけて失敗に終わりつつある「異次元の金融緩和」です。岸田総理も、なぜこのキャッチフレーズを使ったのでしょうね。
ただコロちゃんは、どうも違和感を感じるので、今日ちょっと考えてみようと思いました。
1.子ども支援政策は必要です
下記の表は、内閣府のデータで、各国の「家族関係社会支出の対GDP比」の比較です。細かい説明が要らないくらい、圧倒的に日本は少ないです。
添付の本文では次の様に説明しています。
「我が国は0.81%(2005(平成17)年)となっており、フランスやスウェーデンなどの欧州諸国と比べて3分の1から4分の1となっている」
「また、社会保障給付費に占める家族関係給付の割合をみると、我が国は4.2%(2005年)となっているのに対し、欧州諸国ではおおむね10%程度となっている」
参照:内閣府 少子化社会対策白書 平成22年版 子ども・子育て白書 4.家族関係社会支出の国際比較(1月9日利用)
世界を見渡すと、日本は子ども対策費を「異次元」どころか「別次元」で増やさなければならない現状にあるのです。
しかし、これは「子ども対策」としてです。「少子化対策」としては、ほとんど実効はないのではないでしょうか。
2.制度の根幹が昔のまま
現在の社会保障制度は、戦後の復興期を経て、高度成長期であった1960年代~70年代に骨格が築かれました。
その後、社会の年齢構成が変化しても、寿命の長寿化が進んでも抜本的な変革はなされなかったのです
1970代当時は、高齢者の割合も少なく若者が多かった。その当時の制度を引き摺っている証が、前記の「家族関係支出の低さ」です。時代に全く合っていません。当然変えなければなりません。
3.しかし、少子化対策にはなりません
家族関係の社会福祉政策は、増やさなければならないのは当然です。
総理大臣が年頭挨拶で「異次元の少子化対策」と言えば、皆さんは「対策が成功すれば少子化は改善されるんだな」と思いますよね。
しかし、これからどんな対策を行なっても「少子化」は防げません。何故ならば、それはもう確定した事実だからです。
これが冒頭で言いました、コロちゃんが岸田総理の発言に違和感を感じた理由です。
4.もう20年後の少子化は決定済み
子どもは女性が産みます。当たり前ですよね。その女性から産まれてくる子どもの数は、産む女性の数が減ればその分減ります。
20年後に母親になる女性は、その多くがもう産まれていて、数が少ないのは確定しているのです。
その、少なくなった女性から将来産まれてくる子どもの数は、当然のこととして少ない数にしかなりようがありません。
現在から対策をしても遅すぎるのです。
異次元だろうが別次元だろうが、いくら対策をとっても、今となっては遠い将来の少子化のスピードをやや緩やかに出来るか、そうでないかの違いでしかないとコロちゃんは考えるのです。
5.「未来の年表」(河井雅司 講談社現代新書)で読んだこと
ちょうどコロちゃんは、先日図書館から「未来の年表」という本を借りてきて読んだところでした。
この本には次のように記載されています。
「人口の未来は予測ではない。過去の出生状況の投影である」
「厚生労働省の人口動態調査で2021年の20代前半を計算することが可能だ」
「1997〜2001年生まれは593万3690人となる。一方2021年の0~4歳は438万2242人である。両者を比べると20年後には20代前半が26.1%も少なくなる」
このように書かれています。20年後に若者が1/4も減ることは、既に確定しているのです。
将来に母親となる若い女性は、もう産まれていて激減していることは、既にハッキリした事実なのです。
ですから、今さら少々の子ども手当の増額や子育て支援策は、少子化対策にはなりません。20年後の少子化は既定の事実です。
6.とてもリアルな「未来の年表」
本書の内容は、視点としては新しいものではありません。少子化によってあらゆる産業や社会が負の影響をうける事は、なんとなくでも知っている方は多いと思います。
しかし本書は、少子化の影響を受ける産業と社会の実情を直近のデータを用いて可視化しているのです。
あまりにも身近で具体的な例を挙げられると、これからの社会の変貌に戦慄します。
曰く、「自動車整備学校入学者が半減し、整備士不足で事故を起こしても車が直らない」
曰く、「IT人材80万人不足で銀行トラブル続出」
曰く「ドライバー不足で10億トン分の荷物が運べない」
曰く、「60代の自衛官が80代~90代の命を守る」
これでは日本社会がどの様に変貌するのかと、恐ろしくなります。
本書は第2部として対処方針の「戦略的に縮むための未来のトリセツ」も記載していますが、読んでもあまり明るい未来は想像できませんでした。
7.日本の少子化は、既にディフォルト
「少子化」という言葉は1992年に出された国民生活白書「少子社会の到来、その影響と対応」で初めて使用された言葉です。
その後、最初の少子化対策「エンゼルプラン」が策定されたのが1994年、最初の少子化担当大臣が任命されたのが2007年です。
30年以上経っても、全く成果が上がっていないのです。30年以上かけてもダメだったのが急に明日から成果が上がるとはとても思えません。
そして万が一、明日から成果が出て出生率が上がったしても、それが社会で果実となるのは、赤ちゃんが成人となる20年後以降あたりからなのです。それまでは減り続けます。
これらの状況を勘案すると、日本の「少子化」の下り坂は、既に社会のディフォルトになっているというのがコロちゃんの見解です。
これからの日本は、少子化を前提として、いかに現在の社会機能をソフトランディングさせるかの撤退戦を戦わなければならないというのが「未来の年表」の論旨でした。
コロちゃんもそう思いますね。
どうか皆さんも、この「少子化問題」にぜひ興味をもっていただきたいと思います。
コロちゃんは、もう先の見えたおじいちゃんですが、日本と子どもたちには明るい未来を見て欲しいと心から思います。
コロちゃんは、社会・経済・読書が好きなおじいさんです。
このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に障りましたらご容赦お願いします(^_^.)
おしまい
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