「勝海舟」(松浦令 著 筑摩書房 2010年)
この本は面白くて、3回も読み返しました。
1回目は、普通に読んで面白かった。そうしたら、やたら脚注が多いのに気づきました。
そして、脚注の字数も多い。脚注だけで新書1冊ができそう。(笑)
そこで、2回目は読書中に脚注をいちいち読みながら本文を読むというめんどくさいことをしました。
すっごく面白かったです。
脚注の内容で、歴史的事実の各種資料による食い違いなどを比較しながら一つ一つ考察した経過などが詳細に記入してあり、それがまた楽しい。
3回目は、少し時期をおいたあとに、また楽しみたくなってゆっくり読みました。読んで気持ち良いとわかっている本は、安心して楽しめます。
この本の、何が面白いかって言いますと、勝海舟の生涯を克明に追いかける中で、幕末史・明治史の詳細を知ることができることです。
勝海舟本人の膨大な自筆資料のみならず、周辺関係者の日記等を駆使した本書の考察は、800ページを越える量を飽きることなく楽しめさせてくれます。
個人史もここまで追求すると、こうも面白く読めるものなのかと思いましたね。
勝海舟が、江戸幕府の幕引きを幕府側から行い得たことには、それなりの理由と力量があり、周辺の人々がそれを熟知していたことがよくわかりました。
それにしても、勝海舟はキャラとしてもピカ一です。
思想・行動・判断力・見通し等々すべて超一流のレベルであるにも関わらず、日記の記載は実に大雑把。
日付や連続性などについては、実に無頓着であり、お金の出納記録も当てにならないとは笑ってしまうのですが、後世の歴史家達がみな振り回されているのだから笑い事ではありません。
また、勝海舟が日清戦争に反対していたことも、本書で初めて知りました。
同時代の福沢諭吉が「脱亜論」を唱えていたことを思うとだいぶ違いますが、日清戦争後に清国の弱体化を招きロシアの介入を招いたとの考察には深く考えさせられました。
朝鮮半島の覇権をめぐってロシアと戦った日露戦争は、日清戦争の結果起きたとも言えるわけです。
ですから、勝海舟が主張するように日清戦争を回避していれば、日露戦争やその後の満州事変・太平洋戦争への道とは違う未来があったのだろうかとぼんやりと考えたりしました。
著者の松浦玲氏は、勝海舟の専門家だと対談で話しているのを読んだことがあります。
コロちゃんは、本書が面白くて著作をほとんど読んでみましたが、やはり本書「勝海舟」が集大成なのか一番素晴らしいと思いました。
コロちゃんは、社会・経済・読書が好きなおじいさんです。
このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に触りましたらご容赦お願いします(^_^.)
おしまい。
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