「脱成長と欲望の資本主義」(丸山俊一+NHK「欲望の資本主義」制作班 著)
本書は、NHKのBS番組「欲望の資本主義2002自由に」で放送されたものの書籍化です。
本書には、「人新世の資本論」でよく知られた斉藤幸平氏(経済思想家)とトーマス・セドラチェク氏(チェコスロバキアのマクロ経済ストラテジスト)の対談が掲載されています。
他にも、ブランコ・ミラノビッチ氏(格差研究の世界的権威)、ショシャナ・ズボフ氏(社会心理学者)のインタビューも収録されています。
今、資本主義が限界にきていることをうかがわせる様々な兆候が見られる中で、その後の世界を展望するための模索が行われていると思って、コロちゃんはこのような本を好んで探して読んでいます。
斎藤浩平氏の問いかけは、「資本主義のありかたを見直す動きが出てきている」ことでした。
「経済格差の深刻さ」と「これまでの暮らし方が持続可能でないことが判明したこと」を厳しく指摘しています。
そして「気候危機に対する説得力のある解決策を提供できない現在のシステム」への疑問は、実に挑戦的であると思いました。
トーマス・セドラチェク氏(チェコスロバキアのマクロ経済ストラテジスト)との対談の「成長と環境はトレードオフ関係にある」との言葉は重いですね。
すでに地球の環境はこれ以上の成長に耐えられるのかとの問いです。
二人の対談は「新たなグローバル社会モデル」をめぐり進みますが、「インターネット共和国」と言う夢を語るエコノミストをどう考えればいいのか、まだまだ議論は続きそうだと思いました。
今、資本主義の後の世界を展望するための多角的な議論が行われています。本書もその一つであると思いました。
斉藤氏は語ります「私も社会主義には大賛成です」。
二人とも言葉の定義の問題はありますが、社会主義・社会民主主義には同感するようです。ただちょっとおふたりのニュアンスは違います。
「資本主義を信奉する社会主義者」と「資本主義のネガティブさをしっかり見つめる社会主義者」の対談のように感じるんです。
これを読んで、多くの論点と現在の問題点が明確になりつつあるように思いましたね。
ブランコ・ミラノビッチ氏(格差研究の世界的権威)の語る米中を「リベラル能力資本主義」と「政治的資本主義」とみる視点には納得の思いでした。
しかし、中国に対する見解は実に冷静です。「アメリカは対中政策を見直すべき」と断じています。「経済的なデカップリングは両国にとって何も良いことはない」と。
そして、テーマである「欲望」について、以下のように示唆しているのです。
「欲望は世界共通のものであるが、その理由は私たちを取り巻く経済システムにあります」
このように、人間本来の持つものではないと語っているのが記憶に残りました。
ショシャナ・ズボフ氏(社会心理学者)は「監視資本主義」の私たちが想像もできなかった経済の一形態を明らかにしています。
「CTR予測(クルックスルー率予測)」や「ターゲッティング・メカニズム」の実態には驚きました。
彼は「認識権」の確立で政治に向かおうとしています。
本書は「おわりに」で、12の論点をまとめていますが、資本主義の先を見据えようと、どれもそれなりに興味深いものでした。
論点が多い分、深さに物足りなさは残りましたが、それはそれぞれの著書を読まないと、わからないかと思いました。
本書を、ぜひ読むことをおすすめします。興味深いですよ。
コロちゃんは、社会・経済・読書が好きなおじいさんです。
このブログはコロちゃんの完全な私見です。内容に間違いがあったらゴメンなさい。コロちゃんは豆腐メンタルですので、読んでお気に触りましたらご容赦お願いします(^_^.)
おしまい。
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